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逆風コンビニ、次はビッグデータで決戦 IT大手も関心

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ローソンは位置情報を活用した値引き情報配信を2021年度に全店に広げる

1971年に日経MJが創刊して間もなく、コンビニエンスストアが日本に広がっていった。それから半世紀。小売業界最強の経営モデルを打ち立てたが、ここに来て大転換期を迎えている。経営はデジタル時代にどう向き合うのか。そして店舗運営は誰が担うのか。2つの難問に直面している。

購買履歴からピンポイントで販促

「花金」にちょっとぜいたくなビールはいかがですか――。

1月中旬の金曜夜、仕事を終えた40代の男性会社員がスマートフォンでインスタグラムを眺めていると突然、プレミアムビールの広告が表示された。男性には発泡酒をコンビニで買って帰る習慣があるだけに、プレミアムビールの広告表示に心は揺れ動いた。

ファミリーマートは平均日販の引き上げが課題だ

対象を絞ったターゲティング広告を仕掛けたのは、ファミリーマートと伊藤忠商事が55%出資するデジタル広告会社のデータ・ワンだ。

ファミマ・伊藤忠陣営が組んだのは、NTTドコモ。ドコモのポイントサービス「dポイント」の会員はおよそ8000万人。そこにファミマの決済アプリ「ファミペイ」で得た購買データを合わせ、消費者の属性と購入商品を分析する。「誰が何にお金を使ったのか。データからリアルな消費者の姿が見えてくる」(ファミマ幹部)

目指したのはEC(電子商取引)サイトで表示される「おすすめ」機能の実店舗版だ。データ・ワンの太田英利社長は「デジタル広告で先行するアマゾンやウォルマートに対抗する」と語る。

ファミマの平均日販(2019年度、1店舗あたり)は52万8千円と、セブンイレブンの65万6000円を大きく下回る。1月の既存店売上高も前年同月比4.9%減と、セブン(同2.1%減)より振るわない。

そこでデータ・ワンは顧客の嗜好を押さえたターゲティング広告の対象商品を順次拡大。来店を促し、平均日販の底上げを図ろうとしている。

ファミマの店舗網は全国1万6千店余り。1日の来店客数はおよそ1500万人と、日本の総人口の約1割に及ぶ。伊藤忠の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は、コンビニを「データの源泉」と再定義し、店舗から毎日生まれるビッグデータは「今後の大きな武器になり得る」と予測する。

データ活用は、今後のコンビニの収益拡大を左右する重要テーマだ。

ローソン三菱商事はKDDIとタッグを組む。強みはスマホの位置情報を使う集客策だ。ローソンでの購買履歴とスマホの位置情報を合わせ、コンビニに来店してくれそうな消費者を予測。値引き情報やおすすめ商品を通知する実験を行った。21年度には全1万4千店でデータを使った販促を始める。

ローソンの向山貴史データ戦略部長は「性別や年齢だけでは見えない価値観が重要になる」と話す。割高でも海外産より国産品を好む人や、たまに「こってり」したものを食べたくなる人――。購買データからはこうした消費者像も見えるようになる。将来はデータの外販も検討している。

セブンイレブンはアプリの外部決済サービスに「PayPay(ペイペイ)」を採用した

最大手のセブン―イレブン・ジャパンも、ソフトバンクグループと連携。自社アプリの外部決済サービスにソフトバンクグループ傘下のスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」を唯一採用。不正利用で頓挫した「セブンペイ」後のデータ活用を見据えた動きとして、次の展開が注目される。

各社がデータ活用を進める背景には、コンビニ事業の先行きへの強い危機感がある。国内店舗は6万店に迫り出店余地は乏しくなってきた。24時間営業も見直しが進む。大量出店と24時間営業に依存した成長シナリオは修正を迫られている。

誕生から半世紀、変わる経営主体

岐路を迎えたコンビニ経営だが、半世紀に及ぶ歴史をたどると、経営の主体は大手スーパーから大手商社へと変遷を遂げてきた。

コンビニ誕生のきっかけとなったのは、1974年の大規模小売店舗法(大店法)施行だ。大手スーパー各社は大型店の出店にブレーキがかかり、かわりにコンビニ業態の開発を急いだ。

73年に西友がファミマの前身となる実験店を出店。翌74年にはイトーヨーカ堂グループがセブンイレブンを、続く75年にはダイエーがローソンの1号店をそれぞれ出店した。さらに長崎屋グループのサンクスやユニーグループのサークルKなども登場した。

だが90年代後半に大手スーパーの経営が悪化すると、収益源に育ったコンビニ事業は軒並み売却対象となる。伊藤忠は西友からファミマ株を、三菱商事はダイエーからローソン株を取得。コンビニ業界はその後集約が進んだが、セブンは独立経営を貫き「セブン対商社」の構図が鮮明になった。

だが商社の子会社となったコンビニ2社の収益改善は道半ばだ。ファミマはM&Aで膨らんだ店舗や従業員のリストラに追われた後、上場を廃止した。ローソンも減益基調が続く。三菱商事はローソンの収益低下を受けて、貸借対照表に計上する「のれん」の減損リスクがつきまとう。

50年前に大手スーパーが参入し、20年前に商社が経営に参画したコンビニ業界。今後、想定されるのがIT大手の接近だ。海外では米アマゾン・ドット・コムが無人コンビニ「アマゾン・ゴー」を展開。中国のアリババもスーパーを買収し、小売りに強い関心を持つ。

国内でも楽天が米ウォルマートから西友株を取得するなど、IT企業が実店舗に接近する。

これまで飲食メーカーや物流企業などの力を借りて商品力を高め、成長を遂げたコンビニ各社。次はIT大手との距離が焦点だ。絶妙なバランスで手を組めるか。場合によっては飲み込まれるリスクもある。成熟市場で、新たな収益モデルを探る動きが広がりそうだ。

FC契約、大量更新迫る

「今なお多くの取り組むべき課題が存在する」

2020年9月に公表されたコンビニ実態調査の報告書で、公正取引委員会はそう総括した。調査対象は、国内の大手コンビニチェーンに加盟する全5万7524店。異例の全店調査に1万2093店が回答した。

明らかになったのが加盟店の収支状況だ。売上高は1億8600万円と5年前から745万円減る中、従業員給与は1500万円と83万円増加。売上高から諸経費を引いた加盟店収支は586万円と192万円減少。5年で25%減った。

「もう稼げない。長年のオーナー仲間から『店を辞める』との報告をよく聞くようになった」。関東の大手コンビニチェーンの店主はそう語る。

1974年開店のセブンイレブン1号店(東京・豊洲)は、酒販店オーナーによるFC店だった。オーナーが売り場を切り盛りし、本部は店舗ニーズを吸い上げて商品開発する。役割分担し、チェーン全体の競争力を上げていった。

コンビニ各社はこの相乗効果を期待し、酒販店などの店主とFC契約を交わし出店を加速した。自営業者は店舗運営経験があり、地域にも精通している。店舗用不動産も持ち、収益を確保しやすい条件がそろっていた。

だが自営業者のオーナー候補は次第に減る。それでもコンビニ各社は、成長のため出店を続ける必要があった。そこで増えたのが脱サラ組だ。セブンでは、本部が不動産を用意するFC契約(タイプC)が2005年に全体の過半を超え、直近は8割に迫る。

自営業者から脱サラ組へオーナーの主流は変遷しつつも、コンビニ各社はFC方式で大量出店を続け、収益を拡大してきた。だがFCに依存したコンビニ経営は、試練に直面しつつある。

コンビニ大手3社は11年度以降、年千店規模のペースで出店してきた契約(セブンは15年、その他は10年契約)が順次満了し、更新期を迎える。

契約を更新しなかった店舗は19年度までの3年間でファミマが469店、ローソンは422店、セブンは175店だった。契約更新対象店舗の1~2割前後が、更新せずに契約を終えたことになる。

これとは別に期間満了を待たずに、契約を途中で終える店舗もある。該当店舗は19年度までの3年間でファミリーマートが2500店強、ローソンは1100店強、セブンは1300店強に及ぶ。

店舗網維持へ5年契約や直営化も

そこでローソンは3月から新たに5年満期のFC契約を設ける。期間は従来の半分で、オーナーの精神的な負担を減らし契約更新を促す。

また手数料減額などの支援と合わせ、オーナーに複数店経営の働きかけを強める。ローソンの場合、約1万4千店のうち約7割が複数店を経営するオーナーの店舗だ。

それでも契約切れとなる店舗は増えそうだ。ファミマは20年3月、不採算店舗などを対象とした「店舗再生本部」を設けた。直営店は257店(19年8月)から398店(20年8月)に増加。店舗を立て直し再びFC化を目指す。

直営店経営で先行するのが北海道のセコマだ。後継者不足などで店舗経営を退くオーナーが続出し、直営店への切り替えが加速。現在は全体の約8割が直営店だ。同社は北海道産の牛乳やアイスなどの商品を開発し、全国の小売業に外販。店舗販売以外の収益源を確立しようとしている。

法政大学の矢作敏行名誉教授は、「オーナーを確保するには新たな契約形態も必要」と指摘する。初期投資や店舗オペレーションは異なるが、例えば外食業界では社員の独立を支援し、店舗運営を任せる制度が浸透している。

日本マクドナルドホールディングスのFC比率は約7割に及ぶが、オーナーの大半は元社員だ。直営店を譲り受けて運営したり、高齢になったオーナーの店を引き継いだりしている。モスフードサービスや、カレー店を展開する壱番屋もオーナー候補者に一度入社してもらい、店舗で研修を積んだうえでFCオーナーとして独立する制度がある。

コンビニの成長が続く過程では、FC制度を見直す機運は乏しかった。しかし転換期を迎えた今、FC制度もまた変化が求められている。

(宮嶋梓帆、池下祐磨、安藤健太)

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