東京建物など オフィス空調制御、AIで省エネ
オフィスの空調管理への人工知能(AI)の活用が進み始めた。東京建物は内田洋行などと共同で、フロアの空調をAIで制御する実証実験を実施し、消費エネルギーの約5割の削減につなげた。AIで多数の空調機を一括して制御し、フロアの場所による温度差も解消する。在宅勤務の増加でオフィスの温度設定が難しくなるなか、エネルギーの効率利用につなげられそうだ。
実験は東京建物と内田洋行、情報通信のTOKAIコミュニケーションズ(静岡市)の3社が携わった。2020年7月27日~11月27日に、東京・中央の東京建物が入居するオフィスの1フロアで実験した。フロアの大きさは約1400平方㍍。冬から春にも実験を続け、オフィスの温度調整やAIの精度の向上などを図る。

フロアに温度を測る無線センサーを65個設置し、センサーからの情報を基にAIがフロア内の39台の空調機器の電源や温度設定を制御した。AIは目標温度としてフロア全体がセ氏26度から前後2度以内になるようにしている。内田洋行がAIと情報を伝達するシステム、TOKAIコミュニケーションズがAIエンジンを提供した。
8月に手動で空調を制御した場合、目標温度から外れたエリアが2時間以内に目標温度に戻らなかった回数は9回で、戻った場合の平均時間は36.3分だった。一方、AIで制御した場合は目標温度から外れた空間が出ても2時間以内に全て戻り、戻るまでの平均時間は平均6.4分だった。
不必要な運転を抑えることで、10月と11月に同規模の面積を利用しているビルのオフィスフロアと消費エネルギーを比べると5割程度に抑えた。
東京建物によると手動で空調機器を管理する場合、近い場所にある空調機同士が異なる温度設定で相反する運転をして空調費用が増加する可能性がある。また、人が密集している空間などで温度差が生じる。AIでオフィスの空調機を全体で制御することで、効率的な運転ができるようになる。
3社は現在も実験を続けており、冬から春にかけてのオフィスの温度調整を図る。オフィスで人口密度が増えたりパソコンなどの熱負荷がある場合、AIがどのように安定して温度を制御できるかも実験する。実用化の時期は未定としているが、将来は東京建物が提供するオフィス内での展開を目指す。