投資アプリの米ロビンフッド、利用者1300万人に急増
メディアがロビンフッドに言及した回数は2020年7~9月期に急増した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う株式相場の乱高下を受け、個人投資家がロビンフッドの自ら注文する「DIY型」投資プラットフォームに押し寄せ、利用が急増したためだ。同社のビジネスモデルとプロダクトに改めて注目が集まる格好となった。
ミレニアル世代(20~30歳代)のデイトレードへの関心が高まったことを背景に、20年4~6月期のロビンフッドの売上高は前四半期比98%増の1億8000万ドルになった。新型コロナの感染拡大以降の新規口座開設は約300万口座に上り、その半数を投資初心者が占めた。

知っておくべきこと
・メディアの関心が急激に高まったのは取引急増とシステム障害が理由:ロビンフッドの発表では20年6月のDARTs(収益を伴う1日当たりの取引件数)は430万件だった。既存のオンライン証券の米TDアメリトレード(380万件)や米チャールズ・シュワブ(180万件)を大きく上回った。取引急増によりシステム障害がたびたび発生し、投資家は一時口座にアクセスできず、取引できなかった。
・企業幹部も注目:20年7~9月期には企業の決算発表でのロビンフッドへの言及回数も過去最高に達した。コンピューターで瞬時に膨大な注文を出す高速取引業者(HFT)大手の米バーチュ・ファイナンシャルは、米大手証券会社モルガン・スタンレーや米ネット証券大手Eトレードが自社の顧客であるロビンフッドの売買手数料無料モデルを導入したことについて触れた。クラウド・コミュニケーション関連のソフト開発を手掛ける米トゥイリオも、ロビンフッドが同社と提携したことでパンデミックでも事業規模を拡大した点や、自社のカスタマーサポートを採用した点について強調した。

・ロビンフッドの売買手数料無料のモデルを受け、証券大手も収益モデルを転換:米投資ファンドのUSグローバル・インベスターズや米証券取引所ナスダックなどの金融サービス各社は最近の決算発表で、大手証券会社が新たな取引トレンドを導入するために収益モデルの転換を進めていることを示唆した。チャールズ・シュワブとTDアメリトレードはロビンフッドのモデルに追随し、大手証券では初めて株式や上場投資信託(ETF)、オプションの売買手数料の廃止に踏み切った。預託金、信用取引に伴う貸し出し、証券貸借のほか、個人投資家の資産運用を自動で管理する「ロボアドバイザー」の手数料などにより収益源を多様化することで、売買手数料収入の減少を補う。
次の展開は
・競合各社はロビンフッドが近く新規株式公開(IPO)を計画していることに注意:ロビンフッドは21年に上場する計画を掲げ、米ゴールドマン・サックスにIPOの主要アドバイザーを依頼している。ロイター通信によると、ロビンフッドの上場時の時価総額は200億ドルを超える可能性がある。このIPOはロビンフッドの売買手数料無料モデルと使いやすいプラットフォームに対する業界の信頼が高まりつつあることを示している。ロビンフッドはシリーズGラウンドで4億6000万ドルを調達した直後、上場する方針を明らかにした。この資金調達により、同社の企業価値は117億ドルになった。

・米証券取引委員会(SEC)の調査を受け、ロビンフッドへのメディアの関心はさらに高まる見通し:ロビンフッドは収益の大半を「ペイメント・フォー・オーダーフロー(PFOF)」から得ている。同社はこの仕組みにより投資家の注文を米シタデル・セキュリティーズなどのHFTに回し、リベートを受け取っている。こうしたビジネスモデルは違法ではないものの、SECはロビンフッドが投資家の注文をHFTに回していることを適切に開示していなかったと指摘している。ロビンフッドは20年12月、和解に応じ、課徴金6500万ドルを支払った。
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