日本製鉄、DXに1000億円超投資 AI導入など加速

日本製鉄は22日、2021年度から5年間でデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略に1千億円超を投資すると発表した。注文から生産までの情報を一元管理するシステムを構築し、人工知能(AI)など新技術も導入。データを業務に生かす専門人材も25年までに1千人へ増やす。製造業にもDXの波が押し寄せるなか、デジタル活用の基盤を強化する。
日鉄は生産や営業といった領域のほか、原料調達や品質管理、財務など幅広い領域でDXを推進する。中でもデータを有効活用するための体制整備に重点を置いており、生産に関わる部分では国内全6製鉄所の生産計画や、注文情報を連携させるシステムをつくる。さらに経営層から現場社員まで同一の情報を閲覧できるデータベースも構築する考えだ。
一方で、新たな技術への投資も進める。AIやIoTといった技術に資金を投じ、製造現場での作業自動化などを進める。DX戦略を担う自社の人材育成も進める考えで、データを業務に生かせる専門人材を現状の数百人から、25年には1千人まで増やす。
同日の会見でデジタル改革を担う中田昌宏執行役員は「鉄鋼業のビジネスモデルの中で、変化へ対応できる体質へ会社を変える」と強調した。一連の施策を通じ、将来は製造現場の監視や調整といった業務を現状の半分に減らしたり、経営層への情報共有にかかる時間を8割短縮したりすることを目指す。
これまでも日鉄はITを活用した取り組みを進めてきた。21年1月からは東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)の熱延工場で、NECと連携して設備異常の発生を事前に予測・防止するシステムの構築を開始した。AIを使って2千種類以上のデータをリアルタイムに分析し、異常発生の未然防止などにつなげる狙いだ。
さらに各地の製造現場で、作業を遠隔で支援するシステムの導入も拡大している。カメラやウエアラブル端末などの専用機器を従業員へ配布し、監督者が遠隔で指示や分析ができる仕組みを取り入れている。