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日立、トルコ大手に海外家電売却 「三兎」追いの皮算用

(更新)
オンライン記者会見で登壇する日立GLSの谷口潤社長

日立製作所は16日、家電製品の海外事業をトルコの家電大手、アルチェリクに売却すると発表した。洗濯機などで高いシェアを持つ国内は日立に残す一方、海外では主導権を渡し、相手先の販路や工場などを活用して中核事業に重点投資する。総合電機メーカーでは家電事業の再編が相次いでおり、自前で海外での事業拡大を狙う大手は減り続けている。

「補完関係」になると強調

16日にオンラインで記者会見した日立グローバルライフソリューションズ(GLS)の谷口潤社長は「アルチェリクは欧州や、インドなどの南アジアの市場に強みを持ち、中国や東南アジアが主体の日立とは補完関係にある」と強調。両社の商品についても「日立はプレミアムブランドで、アルチェリクの既存ブランドとすみ分けができる」と提携の意義を語った。

日立は2021年春に家電の海外事業を切り出して新会社を設立。新会社の株式の6割を3億ドル(約315億円)でアルチェリクに譲渡する。

同社は欧州などに続き、アジア市場への投資を進めてきた。16年にパキスタン、19年にバングラデシュで現地メーカーを買収するなどM&A(合併・買収)も積極的だ。これまで東芝や米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業買収にも名乗りを上げていた。

日立の海外での家電販売は、タイなどの東南アジア諸国連合(ASEAN)が5割、中国や台湾が3割を占め、アジアに偏っている。アジア市場で存在感を高めたかったアルチェリクと、海外事業への投資を抑えつつ日立ブランドの浸透を図りたい日立の利害が一致した格好だ。

投資は中核事業のIoT基盤に

今回の新会社設立で、日立は自前での海外の家電事業の拡大を断念した形になる。日立はあらゆるモノがネットにつながる独自のIoT基盤「ルマーダ」をグループの中核事業に据え、それにつながらない事業の売却を進めてきている。その意味で家電は遠隔操作したり、人工知能(AI)で判断したりと、親和性は高い。それにもかかわらず主導権を手放したのには理由がある。

1つ目は投資の効率化だ。「アルチェリクとの提携で海外事業の収益力を高め、IoT分野への投資の原資も確保したい」と日立GLSの谷口社長は語った。アルチェリクの経営資源を活用することで家電の海外展開のための日立の投資はしぼり、ライセンス供与などで得た収益をルマーダなどに回すもようだ。

2つ目は家電を通じたデータの収集だ。IoT家電から得られるデータは、デジタル分野を強化する日立にとって重要な「資産」となる。アルチェリクが海外で販売を拡大すればその分データ量も増す。

3つ目は消費者との接点だ。例えば、日立が生産や販売を持ち続ける国内の家電事業では、英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると洗濯機で25%のシェアを持ち首位だ。冷蔵庫でも3位という。IoTなどBtoBにカジを切る日立にとって、家電の「日立ブランド」は重要な接点となる。

日立グローバルライフソリューションズのドラム式洗濯乾燥機と専用アプリ「洗濯コンシェルジュ」

東芝、シャープは海外企業傘下で立て直し

ただ、東芝が16年に国内外の白物家電事業を中国の美的集団に売却して誕生した東芝ライフスタイル(川崎市)は、美的の工場などに生産を移管したり、販路を活用したりし、18年12月期に黒字転換した。シャープも家電を含めて会社全体が台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、共同調達などによるコスト削減や、海外販売の強化で収益が高まっている。

「国内でも自社の資本のプレーヤーと海外の資本が入るプレーヤーとの二極化が進み、すみわけが出てきている」。日立GLSの谷口社長は東芝やシャープを念頭にこう話す。ただ、海外の家電事業は4割、国内はすべてを自社で抱える今回の選択肢は、東芝などに比べれば中途半端にも映り、改革効果が出にくい可能性もある。二兎(にと)にとどまらず「三兎」を狙う今回の「良いとこ取り」の決断が奏功するかは、今後の合理化策などもカギを握りそうだ。

(菅野気宇)

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