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フィンテック有力VC、デジタルID技術に投資

CBINSIGHTS
フィンテック企業にとって不正送金などのリスクは悩みの種だ。サービスの安全性を高めるため本人認証などができるデジタルID技術に注目が集まっている。政府文書の確認や生体認証などを手掛けるスタートアップがフィンテック企業に対して技術を提供している。CBインサイツがフィンテックに関連するベンチャーキャピタル(VC)の投資を分析した。

フィンテックの有力ベンチャーキャピタル(VC)25社「フィンテック・スマートマネーVC」(CBインサイツが投資先の企業価値や投資成績に基づき選定。この記事の最後に一覧表)はデジタルIDに強い関心を示している。デジタルIDとはサイバーセキュリティー、IT(情報技術)を使って規制への対応を効率化する「レグテック」、フィンテックが交わるニッチな分野だ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

フィンテック・スマートマネーVC25社のうち、2015年以降にデジタルID分野のテック企業に投資した企業は15社に上る。

フィンテックの有力VCがこの分野に関心を示すのは当然だ。デジタルIDスタートアップはフィンテック企業に対し、政府文書の確認や生体認証、不正ログイン防止手段を提供しているからだ。こうした手段は本人確認(KYC)やアンチマネーロンダリング(AML、資金洗浄対策)規制の順守を支援する。

スマートマネーVCが出資する米アロイ(Alloy)は法人向けカードを発行する米ブレックス(Brex)などの顧客企業がオンボーディング(口座開設に伴う登録プロセス)の際に口座情報を確認できるサービスを手掛ける。ブレックスはアロイを活用することでカードを即時発行しながらも、情報が適合しなかった口座の契約を阻止できる。

今回のリポートではフィンテック・スマートマネーVCによる15年以降のデジタルID企業への投資状況をグラフなどに示した。フィンテック向け事業を現在手掛けている企業か、近く手掛ける可能性がある企業を分析の対象にした。

有力VCのデジタルID分野での投資状況 (15年~20年11月25日のフィンテック・スマートマネーVCによるデジタルID企業への投資。それぞれの線は未公開市場への投資が1回以上実施されたことを示す)

主なポイント

・最も活発な投資家はアンドリーセン・ホロウィッツ

フィンテックの有力VCのうち、デジタルID分野への投資が最も活発なのは米アンドリーセン・ホロウィッツだ。安全なログインや本人確認に力を入れる米ジュミオ(Jumio)とスウェーデンのユビコ(Yubico)、不正行為の防止やデータセキュリティーに取り組む米センティリンク(Sentilink)と米ベリーグッドセキュリティー(Very Good Security)の4社に投資している。

2位は米ニュー・エンタープライズ・アソシエーツ(NEA)と米アクセル(それぞれ3社に投資)で、3位は米フェリシス・ベンチャーズ(2社)だった。

有力VC、デジタルIDの様々なカテゴリーに投資

フィンテック・スマートマネーVCはデジタルID企業17社に投資している。圧倒的に多くの投資が集中しているカテゴリーはない。

フィンテック・スマートマネーVCによるデジタルID分野への投資は「身辺調査(29%)」と「ID確認&オンボーディング(29%)」で過半数を占める。「不正行為の防止(24%)」への投資も底堅い。「データセキュリティー&コンプライアンス(12%)」「生体認証(6%)」にも資金が投じられている。

有力VC、デジタルIDの複数のカテゴリーに投資 (15年~20年11月25日のフィンテック・スマートマネーVCによるカテゴリー別投資件数、企業は主要事業に基づいて分類した)

複数の有力VCから出資を受けるのは、身辺調査ツールの米チェッカー(Checkr、株式発行を伴う資金調達額は公表ベースで3億900万ドル)と米トゥルーワーク(Truework、4500万ドル)、不正行為の防止や本人確認を手掛けるアロイ(5600万ドル)、不正防止ツールのセンティリンク(1400万ドル)、安全にログインするための鍵を販売するユビコ(9500万ドル)だ。

スマートマネーVCから出資を受けているその他の資金力を持つスタートアップは身元確認情報を提供する米ジュボ(Juvo、5900万ドル)、繊細なデータの保護を手掛けるベリーグッドセキュリティー(4500万ドル)などだ。

コロナ下でも投資額は安定

20年1月~11月25日のデジタルID分野へのあらゆる投資家による投資額は計8億6900万ドルに上る。もっとも、20年通年の投資額は過去最高だった19年の10億ドル強を下回る見通しだ。投資件数は今のペースが続けば前年比24%減となるが、1件当たりの投資額は増えている。

デジタルIDへの投資額、過去最高だった19年の水準をほぼ維持 (16年から20年11月25日までの株式取得・引き受けを伴う投資の件数と金額、公表ベース、100万ドル)

シリーズA、Bラウンドへの投資が増加

シリーズAとBのデジタルIDスタートアップへの投資件数が大きく増えている点は注目だ。20年1月~11月25日のシリーズAへの投資件数は全体の37%を占め、19年通年の21%から増えた。一方、シード/エンゼル投資のシェアは下がった。これはこの分野のスタートアップが成熟しつつあることを示している。

成熟しつつあるデジタルID分野 (15年から20年11月25日までのステージ別の投資件数の割合)

投資の大半は米英に集中

デジタルID分野のスタートアップは米企業向けが43%、英企業向けが15%と両国で過半数を占めている。その他の主な投資先はカナダ(5%)、中国(4%)、シンガポール(4%)だ。

投資件数の大半は米英に集中 (15年~20年11月25日の国別のデジタルID投資件数)

フィンテック・スマートマネーVCについて

フィンテックのスマートマネーの動向を分析するために、この分野の有力VC25社の投資活動に注目した。25社は投資先の企業価値や投資成績に基づいて選定した。

フィンテックの有力VC「スマートマネーVC」25社(アルファベット順)
企業名国・地域
アクセル
アンドリーセン・ホロウィッツ
バッテリー・ベンチャーズ
ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ
DSTグローバル香港
フェリシス・ベンチャーズ
ゼネラル・カタリスト
GGVキャピタル
IDGキャピタル中国
インデックス・ベンチャーズ
インサイト・パートナーズ
インスティテューショナル・ベンチャー・パートナーズ
コースラ・ベンチャーズ
クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)
メンロ―・ベンチャーズ
ニュー・エンタープライズ・アソシエーツ(NEA)
QEDインベスターズ
レッドポイント・ベンチャーズ
リビット・キャピタル
サファイア・ベンチャーズ
セコイア・キャピタル
セコイア・キャピタル・チャイナ中国
スパーク・キャピタル
スライブ・キャピタル
ユニオン・スクエア・ベンチャーズ

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