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台湾の科学技術力、基礎研究軽視の危うさ

台湾の科学技術力に関する総合的な調査がまとまった。研究開発費の使い手が企業部門に偏るなど、世界的な電機大手を擁する台湾らしい特徴が統計数字で見て取れる。技術貿易の収支改善など技術力の蓄積を示す前向きな数字もあるが、基礎研究の軽視という危うさも浮かび上がっている。

日本の科学技術振興機構(JST)が6月末、「蔡英文政権のイノベーション政策と基礎研究動向」と題した調査を公開した。台湾当局の科学技術政策のほか、研究開発費の配分や学術論文の発表数などの関連データを幅広くまとめている。

特徴的なのは研究開発費の使い方だ。2020年に台湾全体で約7187億台湾ドル(約3兆2500億円)だった研究開発費の使用のうち、82.5%を企業部門が占めた。日米中など主要国がおおむね7割前後であるのに比べて高い。

さらに、企業部門の研究開発費のうち、76.7%が電子部品・パソコンなど電子機器に投入されていた。台湾積体電路製造(TSMC)、鴻海(ホンハイ)精密工業など電機大手が台湾全体の研究開発を支える構図を数字で裏付けている。

技術貿易収支、大幅に改善

調査では、海外との特許権・ノウハウの提供・受け入れを示す技術貿易の収支が改善したことも明らかになった。15年に約1600億台湾ドルだった技術輸入が17年に約788億台湾ドルまで急減し、その後も減少傾向が続いている。

電子部品とパソコン関連の二つの分野で、主に米国からの技術輸入が大幅に減っている。調査を請け負った野村総合研究所台湾の田崎嘉邦董事兼副総経理は「台湾メーカーの技術力が向上し、米社へのライセンス料の支払いが減ったようだ」と分析する。

基礎研究比率、なお低水準

一方で研究開発費のうち、将来の科学技術力を支える基礎研究の比率は20年に7.0%だった。この指標では中国が5%強にとどまることが知られているが、日米欧など工業国は20%前後が一般的で、台湾もかなり低い水準にある。

「目の前の利益を重視する台湾らしさが表れているが、科学技術の国際競争力を中長期で維持するにはかなり心配な数字だ」(田崎氏)。蔡政権は16年、基礎研究の比率を10%まで高める方針を掲げたものの、改善していない。

TSMCなど台湾企業による半導体やパソコンの受託生産は世界のIT(情報技術)産業でインフラ的な役割を果たす一方、過度な生産集中のリスクも指摘されている。今回の調査も、企業が投資余力を失えば台湾全体の技術開発力が衰え、インフラが揺らぎかねない危うさを示している。

(アジアテック担当部長 山田周平)

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