こども政策ぜひ実現して 中室牧子さんらとThink!

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。3月24〜31日の記事では、慶応義塾大学総合政策学部教授で東京財団政策研究所研究主幹の中室牧子さんが「こども政策ぜひ実現して」を読み解きました。このほか「トランプ氏を起訴」「三菱とみずほ、何が分けた」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「こども政策ぜひ実現して」をThink!


【中室牧子さんの投稿】文部科学省が発表している「学習費調査」をみてみると、学費や給食費など学校教育にかかる支出は、公立小学校で年11万円、公立中学校で18万円だ。それに対して、学校外教育にはそれぞれ約2〜3倍の21万円、31万円が支出されている。とくに私学に通わせていたり、塾や習い事に行かせていたりする家庭の教育費の総額は一貫して上昇している。迂遠なようだが、王道なのは、やはり公教育の質を高め、私学や塾などに多くのお金をかけずに済むような状況にすることではないか。公教育の質が高ければ、家計の経済的負担を減らすことができるし、教育格差の解消にもつながる。
「トランプ氏を起訴」をThink!


【中林美恵子さんの投稿】起訴状の内容が明らかになるのは、来週前半とみられる。トランプ氏に罪状認否の機会が与えられる際だろう。(34の嫌疑があるとの報もあるが。)その後は審理陪審(小陪審)へ移る。ただ、アルビン・ブラッグ地区検事が民主党員で民主党政治家への献金者であることは、民主党による選挙妨害だという声につながっている。トランプ氏が住むフロリダ州のデサンティス知事は、トランプ氏をニューヨーク州に引き渡さないとする意向だとの報道もあり、国内分断は激しくなる様相だ。これまでも様々なスポットライトを浴びることで政治的に浮上してきたトランプ氏。米国内政の不安定化は、国際秩序にも打撃を与える可能性がある。
「三菱とみずほ、何が分けた」をThink!


【窪田真之さんの投稿】三菱UFJフィナンシャル・グループはM&A巧者である。モルガン・スタンレーへの出資は最大の成功であるが「買い」だけでなく「売り」でも優れた判断をしている。2021年に米カリフォルニア州の「MUFGユニオンバンク」の全株売却を決めたのも良い判断だった。従来型の商業銀行業務を続ける米国の地方銀行を持ち続ける意義が薄れたとの判断だ。あのタイミングで売らず、今売ろうとしたら銀行危機で売値は大幅に下がっていたと考えられる。アジア進出にも積極的。タイのアユタヤ銀行、インドネシアのバンクダナモンを傘下に収めている。この買収では減損が発生したが、長い目で見て高いリターンを生む投資となると考えられる。
「EU、エンジン車容認で合意」をThink!


【深尾三四郎さんの投稿】車産業における競争力の源泉はエンジン性能から再生可能エネルギーの調達力へ移行する。車メーカーで合成燃料の容認を歓迎しているのは、高コストの合成燃料を許容できる富裕層を客にしたポルシェとフェラーリ。当理事会でドイツに同調して反対票を投じたのはポーランドだけで、イタリアは反対という事前予想に反して棄権に回った。脱エンジンに関しては小さな逃げ道を設けたが、脱炭素の基本方針に変化はない。合成燃料で恩恵を受けるスーパーカーの台数たるや微々たるもの。欧州にとって地の利である再エネを普及させて脱炭素化を推し進めることをベースにした"2035 ICE BAN"が正式決定したという事実の重さに目を向けるべき。
「フィンランドのNATO加盟」をThink!


【広瀬陽子さんの投稿】共に中立国であったフィンランド、スウェーデンは長年、防衛協力も進めてきたこともあり、NATOに両国同時加盟を目指してきたが、フィンランドが先行加盟することになりそうだ。フィンランドとしては、加盟に備え、昨年からブリュッセルのNATO代表部の人員も2倍近くに拡充し(今後、更なる拡大もありうる)、NATOの議論等にも正規加盟国に近い形でコミットしてきた。加盟は順調に進むだろう。ロシアの反発は必至だが、他方、ロシアができることは実質的には多くない。フィンランドもその脅威に対抗すべく、国境に壁を構築するなど、様々な対応策を練っている。NATO加盟で安全保障状況はより確実なものとなるだろう。
「飲用乳価2年連続上げ」をThink!


【大泉一貫さんの投稿】生乳が過剰なのになぜ乳価があがるのか?誰もが抱く疑問だろう。二つの点で懸念がでてくる。第一に、消費が落ち込み生乳離れが進む可能性。酪農では「加工原料乳生産者補給金暫定措置法」が価格形成に関与しており、プロダクトサイドの都合だけで値上げすると、コメがそうなったように需要は落ち込む。第二に、変動に強い生産構造へ変えるきっかけが失われる。日本の乳価は世界一高い。生産性も高い。それが資材高で一転して赤字になるという。本来牛は草を食べて乳を出す生物。それを舎飼にして穀物を与えている。草地酪農が良いが、せめて国内で子実用トウモロコシなどを作って供給する構造にしたいもの。
【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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