米政府債務が上限到達 レイクさんらとThink!

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。1月13〜20日の記事では、アフラック生命保険会長のチャールズ・レイクさんが「米政府債務が上限到達」を読み解きました。このほか「異次元緩和の限界」「エーザイ認知症新薬」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「米政府債務が上限到達」をThink!


【チャールズ・レイクさんの投稿】米政府債務が上限を超えたことは過去にもあったが、今回は嫌な予感がしてならない。米議会の混乱が深刻だからだ。年始のマッカーシー下院議長の選出は、共和党極右派の造反により投票回数が4日間で15回にも及び、10回以上も投票が行われたのは南北戦争前の1859年以来、164年ぶりの異例の事態であった。新議長は極右議員の支持を得るために、議長解任要求や予算編成に関する主導権で大きな譲歩をしたと言われている。上下院のねじれに加え下院共和党内の分断により議会の混乱が継続するなか、債務問題で政争が繰り広げられる可能性が高い。米経済の景気後退が心配されるなか、政治が大局観を持ち課題を解決することに期待したい。
「異次元緩和の限界」をThink!


【中空麻奈さんの投稿】政策決定会合の前日に行ったセミナーで「変動許容幅の追加拡大か、現状維持か。私は現状維持だと思う」と言った手前、YCCの撤廃など抜本的対策にシフトしたらどうしよう、と思っていたので、現状維持に胸を撫で下ろしたのは否めない。問題は今後だ。1月にやらなかったことを3月にやって、日本の多くの企業の決算期にマーケットの大混乱を起こしてもらっては困ると考えると、次に日銀が動くのはやはり新体制になった4月以降ではなかろうか。そう遠くない将来に正常化として異次元緩和からの決別をすべきだが、それ以上に金融政策に関心を集中させる現状を打破するためには、財政健全化と経済成長に軸足を移していく必要がある。
「エーザイ認知症新薬」をThink!


【高橋祥子さんの投稿】今回の「レカネマブ」は「アデュカヌマブ」と同じアミロイドβをターゲットにした抗体医薬で、承認されればとても大きな成果になると思います。一方で、症状を改善させる性質のものではなく「進行を遅らせる」効果であることや、また患者さんの遺伝的背景によっては脳浮腫や脳出血の副作用が報告されているため、どの患者さんに投与すると恩恵が受けられるのかの選択が極めて重要になってきます。上市した後にも十分なデータを取っていくことで、どのような患者さんや症状・時期なら効くのか、またどういう患者さんなら副作用のリスクが高いのかを明確にしていくのが重要なのだと思います。
「ユニコーン思考の賞味期限」をThink!


【加藤雅俊さんの投稿】ユニコーンのような高成長スタートアップの登場は、イノベーションや雇用創出に大きく貢献し、国の経済成長に寄与することが期待されている。しかし、「ユニコーン創出」を政策目標とすることは危ういかもしれない。スタートアップの評価は上場企業とは異なり、「客観的」な価値ではなく、主観的で投資家が支払うことを望んだ価格を示しているため操作がしやすい。評価であり価値創出ではない。「外れ値」であるユニコーンが自然発生的に登場することは歓迎だが、その出現を狙った政策を行うべきではないだろう。ユニコーンの数を競うゲームではない。政策は個別企業の支援より経済的・社会的利益を促進することに焦点を当てる必要があるだろう。
「先生の質を保てない」をThink!


【大湾秀雄さんの投稿】教員不足解消策の柱は、教員の雇用制度改革でしょう。比率で20%近くに上る非正規教員を今すぐに正規職員として採用し、十分な研修とベテラン教員による支援を提供することです。いつクビになるかわからず十分な研修を受けられない職に十分な人材が集まるわけはありません。将来教員があまるかもしれないから非正規を増やすというのはあまりに近視眼的です。ICT活用などスキル向上も急務。優秀な教員を育成しておけば、人材が余るという事態は起きない。現場の優秀な教員を文科省や地方政府の行政のために活用しても良いし、教育産業は少子化でも拡大している。早期退職制度を実施すれば、塾や私立学校からも引きがある教員は学校を去る。
「電気代が過去最高」をThink!


【竹内純子さんの投稿】電気料金の上昇を伝えるだけでなく、その要因を伝えるべき。日本は石油・石炭・天然ガスいずれもほぼ産出しないので、火力発電依存が高い現状では、化石燃料価格上昇や円安で当然電力価格は高騰する。こうしたリスクを低減するには化石燃料を利用しない再生エネ、原子力の比率を高める必要がある。再生エネについては日本は福島事故以降、世界に例を見ないスピードで増加させ、再生エネ全体では世界6位、太陽光は世界3位の設備量となっている。ただ、再生エネ導入のための補助金が年間2.7兆円にもなるなど現状電気代増加要因になっている。岸田政権が安全規制に合格した発電所の再稼働を促進するとしたのは、有効な手段がほかに無いからだ。
【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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