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米下院議長の台湾訪問と米中関係 川島真さんらとThink!

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。7月29日~8月5日の記事では、東京大学大学院総合文化研究科教授の川島真さんらが「米下院議長の台湾訪問と米中関係」を読み解きました。このほか「日野自動車の不正問題」「最低賃金引き上げ」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

「ペロシ米下院議長が台湾訪問」をThink!

ペロシ米下院議長、台湾蔡総統と会談 「民主主義守る」(8月2日)
台湾訪問中のペロシ米下院議長と台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は3日午前、台北市内の総統府で会談した。ペロシ氏は「台湾と世界の民主主義を守る」と表明し、蔡氏は「訪問は米国議会の台湾への揺るぎない支持」と歓迎した。

川島真さんの投稿】従来、日米などの立法府(議会)を通じた対台湾交流は認められており、下院議長の訪台も前例がある。昨今、中国は蔡英文政権を独立志向政権だと見做し、議員であれ、企業であれ、蔡政権に接近する者を全て批判する。アメリカとしては従来からの「一つの中国政策」を変えているつもりはない。だが中国は強く反対し、軍事的威圧を高め、台湾の官公庁に対するサイバー攻撃などを行った。中国国内では対台湾強硬論が高まっており、台湾政策も今後一層厳しくなろう。振り返れば、10年前習政権形成期には日本の尖閣「国有化」があり、それが政権の保守化を加速させた。今回のことにより三期目の習政権が一層保守化するか、内政への影響が懸念される。

「中国、台湾取り囲む軍事演習」をThink!

中国、台湾取り囲む軍事演習 実弾使い大規模に(8月3日)
中国人民解放軍はペロシ米下院議長の台湾訪問に反発し、2日夜から軍事演習を始めた。実弾を使った射撃も実施した。4日から台湾を取り囲むように6カ所で訓練する。

中林美恵子さんの投稿】ペロシ下院議長の訪台については、彼女の人権等の信念やレガシー作りを含め説明はそれなりにつくが、緊張を高めている側の中国については不明点が多い。中国らしい過剰反応ではあるが、短期的には経済問題を覆い隠し共産党大会における習近平氏の地位安定を狙い、長期的には習氏の地位が安定すればリスクを取ってでも軍事行動に出易くなるという意味合いも否定できない。米国が目指す「現状維持」は、この地域の安定にとって必須だ。しかし、中国は「現状維持」の定義そのものに大きなズレがある。中国が「現状維持」の意味をハッキリさせることが先決だが、容易でないところに問題の根がある。

「米中、覇権争いの始まり」をThink!

アメリカ・中国、長い覇権争いの始まり(8月4日)
米中は互いにひけない対立のトンネルに入った。台湾問題はその元凶というよりも、結果だ。両大国が争っているのは世界秩序の主導権であり、緊張は10年、20年の単位で続くだろう。

柯隆さんの投稿】民主主義同士の国であれば、多くの対立は避けられたはず。価値観が異なるため、相互不信が増幅する。それは伝統的な覇権争いと違って、価値観をめぐる対立を軸とする覇権争いになっている。すなわち、自由と民主主義を信奉する米国(米国の民主主義は決して完璧なものではないが)は強権政治を受け入れることができない。半面、中国は一党支配の政治体制を絶対に堅持するとしている。この対立を展望すれば、アメリカは自由と民主主義を諦めない。中国はいつまで一党支配を堅持できるか。

「米国、中国のミサイル発射非難」をThink!

米政権、中国のミサイル発射非難 緊張拡大望まず(8月5日)
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は4日の記者会見で、中国による台湾周辺での弾道ミサイル発射を伴う軍事演習について「無責任だ」と非難した。

益尾知佐子さんの投稿】中国は昨日発射したミサイルに、極超音速の東風17号が含まれていたとしています。米国もまだ開発しきれていない技術とのことです。今回の中国の軍事演習区域は3ヶ所で台湾の領海に大きく食い込んでいます。台湾の「主権」に実際に手をつけ始めたということです。演習区域を台湾海峡に限定せず、台湾を包囲し、台湾島を飛び越えてミサイルを飛ばすという演習は、中国側も「初めて」と喜びを込めて伝えていますが、逆に言えば明らかな現状変更です。米国の下院議長の訪台でエスカレートした緊張。米国はその結果に責任を持って対処するのでしょうか。それとも座視するだけでしょうか。それによって日本がとりうる政策も大きく変わります。

「日野自、不正巡る報告書」をThink!

日野自、開発遅れを「お立ち台」で追及 不正巡る報告書(8月3日)
日野自動車のエンジン試験不正を調査していた特別調査委員会は2日、報告書を公表した。新たな不正を明らかにするとともに、不正が起きた原因を分析した。

山口周さんの投稿】アイヒマン裁判を傍聴した哲学者のハンナ・アーレントは「悪事は無批判な優等生がなす」と喝破しました。教育システムの成果で現在の日本には至る所にこの「無批判な優等生」が溢れており、そこかしこで今回のような不祥事が起きています。このような状況に陥ると仕事はたちまちブルシットジョブとなり、仕事人生は子供に語れない悲劇(喜劇?)となります。どうするか?政治経済学者のハーシュマンは「発言と離脱」の二つが必要だと指摘していますが、このような組織で「発言」が受け入れられるとはとても思えない。つまり「離脱=逃走」が解になると思います。私たちには「逃げる権利がある」のではなく「逃げる義務がある」ということです。

「最低賃金、上げ幅最大」をThink!

最低賃金31円上げ961円 全国平均、物価高で上げ幅最大(8月1日)
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は1日、2022年度の最低賃金の目安を全国平均で時給961円にすると決めた。前年度比の上げ幅は31円と過去最大で、伸び率は3.3%になった。

鈴木亘さんの投稿】労働者全体の賃金引き上げは日本経済にとって最重要課題の一つであるが、最低賃金を政策的に引き上げて、全体の賃金引き上げを図ろうというのは、政策的に間違っており、効果も期待できない。賃金の原資となる成長のパイを確保し、リカレント教育やデジタル化の推進などで、労働生産性を引き上げることこそが本筋である。また、最低賃金に直面する労働者に多いと思われる低所得のワーキングプア対策は、市場で決まる賃金を政策的に歪めるのでは無く、ピンポイントで低所得者に限った分配政策で対応すべきである。最低賃金を大幅に引き上げ、経営が苦しくなる中小企業に補助金をばらまくというマッチポンプはもうそろそろ卒業しなければならない。


Think!
平日のニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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