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[社説]世界景気に薄日も油断は禁物

約1年前のウクライナ危機の発生後で初の上方修正だ。国際通貨基金(IMF)は1月末、四半期ごとに出す経済見通しの最新版を公表、2023年の世界経済の実質成長率予測を2.9%と、3カ月前より0.2ポイント引き上げた。

エネルギーなどの価格高騰に米欧の急速な金融引き締めの影響で「世界の3分の1が景気後退に陥る」(ゲオルギエバ専務理事)との悲観論をにじませた昨年秋に比べ、世界景気には薄日が差した。だが先行きは不透明で、懸念材料も多い。油断は禁物だ。

IMFの見通しを改善させた最大の要因は中国の状況の変化だ。経済活動や人の移動を制限して新型コロナウイルスを広げさせない「ゼロコロナ政策」を一挙に転換したことで、巨大市場の消費や企業の生産活動が活気づく。23年の中国の成長率見通しは前回より0.8ポイント高い5.2%に上げた。

米国や欧州で物価上昇の勢いがやや鈍る見通しも示した。中央銀行が政策金利引き上げのペースを落とし、景気へのブレーキが弱まるとの判断だ。IMFは23年に「インフレ率低下への転換点」を迎える可能性を指摘した。

内需が底堅い米国は3カ月前より0.4ポイント高い1.4%、暖冬でエネルギー高騰の圧力が緩むユーロ圏も0.2ポイント高い0.7%とみる。英国はマイナス0.6%成長と主要国で唯一の大幅悪化だ。

日本は0.2ポイント高い1.8%成長と見通した。昨年秋の経済対策の効果に加え、米欧と違い、金融緩和を修正していないことが追い風となる。低位だが、米欧よりも高い成長率を保つとの見方だ。

主要経済国が同時に景気後退に陥るような事態は遠のいたとの判断だが、世界景気を悪い方向に動かすリスクは数知れない。

中国は不動産不況などの懸案を抱え、一方で景気好転が世界インフレの火種となりかねない。各国の利上げの悪影響、ロシアとウクライナの戦闘の激化も読み切れない。景気も物価も深い霧の中だ。方向を注意深く見定めたい。

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