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[社説]「自由都市」香港の早すぎる消滅を憂える

香港は1日、英国から中国への返還から25周年を迎えた。「一国二制度」の下、高度な自治を約束した50年の折り返し点にすぎないのに、中国共産党の厳しい統制で「自由都市」香港は消滅しようとしている。たった25年での極端な変質を強く危惧する。

香港の憲法といえる香港基本法はトップの行政長官を普通選挙で選ぶ目標を掲げるが、実現していない。民意を反映する選挙の仕組みが不完全な香港では、市民のデモが政治参加の重要な手段として容認されてきた歴史がある。

2019年、逃亡犯条例改正案に反対するデモが200万人規模に膨らみ一部で過激化すると事態は急変した。中央政府が香港立法府の頭越しに成立させた香港国家安全維持法(国安法)の施行で民主派への弾圧が一気に強まる。

香港入りした習近平国家主席は演説で「一国二制度は香港で世界に認められた成功を収めた」と訴えたが、実態とかけ離れている。かつてアジアでトップクラスとされた香港の報道の自由は地に落ちた。中国に批判的な日刊紙が廃刊し、創業者は服役中だ。民主活動家も逮捕され、「愛国者」ではない候補を排除する審査導入などで議会から民主派が一掃された。

その弾圧を指揮した警察出身の李家超氏が対立候補なしの投票で選ばれ、新たな行政長官に就任した。高度の自治は名ばかりとなり、だれもが口をつぐむ。1997年の返還時、そんな香港を誰が想像できただろうか。

欧米企業では香港から事業や人員を他に移す動きが目立つ。香港の特長だった国際金融都市としての開放性に疑問符が付き、新型コロナウイルス対策の厳しい規制もそれに拍車をかけている。

中国は規制が少ない香港を自由主義、資本主義社会との接点としてフル活用し、大きな利益を得てきた。だが、国安法で構造が激変し、独立した香港の司法制度の維持さえ不透明になった。これは香港の人々の移民ラッシュにもつながっている。もはや事態の放置は許されない。

中国全体に占める香港経済の割合は小さくなった。とはいえ中国経済は「ゼロコロナ」政策や、サプライチェーン(供給網)の一部分断で厳しい局面にある。習近平政権は、長い時間をかけて育まれた香港の役割と価値を過小評価している。香港という窓口の重要性を今こそ再認識すべきだ。

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