[社説]ギグワーカー保護の出発点に

インターネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の待遇を改善し、保護するための出発点とすべきだ。
東京都労働委員会が料理配達「ウーバーイーツ」の運営会社に対し、配達員でつくる労働組合との団体交渉に応じるよう命じた。個人事業主が大半のギグワーカーを労働組合法上の労働者と認めた国内で初めての判断になる。
ギグワーカーは収入が不安定なうえ、働き手としての立場も弱く不利な取引条件を強いられがちだ。雇用関係がなければ基本的に労働法の保護対象とみなされず、安全網が脆弱なのが課題だ。
ウーバーイーツの労組は事故時の補償や報酬体系の説明を求めて団交を申し入れた。だが運営会社は労組法上の労働者にあたらないと拒否したため、労組が都労委に救済を申し立てていた。都労委は配達員は広い意味で運営会社の指揮監督下にあるなどとして労働者にあたると判断した。
運営会社は団交に応じ、配達員の待遇改善に向けた話し合いをする必要がある。働き手の不安や不満を取り除くことはサービスの品質を高め、円滑な事業運営にもつながると考えるべきだ。
海外ではギグワーカーを保護する取り組みが広がっている。欧州連合(EU)の欧州委員会は2021年、一定の基準を満たした場合に労働者と見なす法案を公表した。今回の判断をきっかけに日本国内でも議論を急ぎたい。
ギグワーカーは基本的に最低賃金が保障されず、労災保険も個人負担の特別加入の対象にとどまるなど、雇用労働者と格差がある。働き方にかかわらず、一定の安全網を整えることは重要だ。
一方で、ギグワーカーは隙間時間を利用するなど自由な働き方を望む人が多い。雇用労働者と同じ扱いになることで自由度が失われないよう配慮が欠かせない。
政府は多様な労働実態やニーズを把握し、個人が希望する働き方を安心して選べるような制度づくりを進めてほしい。