[社説]原発建て替えで安全性高めよ

原子力発電政策の大きな転換となる。経済産業省は原子炉の建設推進を明確に打ち出した。原発は稼働中に温暖化ガスをほとんど出さない。エネルギー不足の懸念解消と温暖化対策を両立させるうえで妥当な判断だ。
2011年の東京電力福島第1原発事故以来、原発の建設議論はなかばタブー視されてきた。それを前へ進めたのは評価できる。
経産省案は原子炉の建設について、当面は寿命を迎えるなどして廃止される既存炉からの建て替えを想定している。新たな立地を探すよりも現実的だ。
現行法は原子炉の運転期間を原則40年と定め、1度に限り最長20年の延長で60年まで認める。期限が近づきつつある既存炉は1980年代以前の設計に基づく。
その後、軽水炉の安全性を高める技術開発は進んだ。外部電源が途絶えても冷却できる仕組みや、炉心が万が一、溶け落ちても受け止めて漏出を防ぐ設備が実用化している。既存炉を最新タイプに建て替え、より安全に使えるようにするのは理にかなう。
一方で、経産省は既存炉の運転期間延長についての考え方も示した。安全審査による停止期間を運転期間に含めないことで実質的に60年を超えた稼働も可能とするというが、中途半端な内容だ。
運転期間延長は、建て替えの推進と矛盾するようにも見える。当座の電源確保のため最低限の原子炉で運転期間を延ばし、その後は新しい炉に移行するといった道筋をわかりやすく示してほしい。
安全審査の質を落とすことなく効率化し、不必要に時間をかけない工夫も事業者と規制当局の双方が続けるべきだ。
原発は国際的に活用機運が高まっている。ただ、使用済み核燃料の再処理や最終処分地の選定など課題も多い。原発にいつまで、どの程度依存し続けるのかは、なお議論の余地がある。
再生可能エネルギーの利用拡大や省エネの重要性は今後も変わらず、全力で進める必要がある。
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