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[社説]銀証ファイアウオール規制の緩和が問われる

グループ内の銀行と証券会社の間にもうけた「情報の壁」はやはり必要なのか。証券会社を傘下に置くメガバンクグループが金融当局に働きかけてきた、顧客情報の銀証間の共有制限を定めた「ファイアウオール規制」を緩和する正当性が問われかねない事態だ。

証券取引等監視委員会の調査を通じ、SMBC日興証券と三井住友銀行との間で、本来は認められていない顧客の非公開情報の共有が複数発覚した。

メガ銀は「ファイアウオール規制は国際標準ではなく、日本の金融の競争力をそいでいる」と主張し、緩和を求めてきた。

一方、日本は独特のメインバンク制のもと、融資先企業に対して銀行は優越的な立場にある。ファイアウオール規制は、銀行の力を使って顧客に対して不利な証券サービスの購入を強いるといった、弊害を回避するためのものだ。

だが、金融庁はメガ銀の要求を受けて段階的に規制を緩和している。今年から顧客が事前に拒否しないかぎり上場企業の情報共有が可能になった。未上場企業や個人への適用拡大も検討中だ。

今回判明した事例では、三井住友銀と日興の間で、顧客企業が共有停止を求めたにもかかわらず、銀行が入手した株式売り出しや企業買収の情報を証券会社の営業活動に利用しようとしていた。

他のメガ銀もグループ内に証券会社を抱えている。ほかにも違反事例が潜んでいないか、金融庁は再点検すべきだ。

これとは別に、日興は三井住友銀出身の当時の副社長らが逮捕される相場操縦事件を起こした。

金融庁は日興の一部業務停止命令に加え、三井住友フィナンシャルグループの処分も検討中だ。証券会社がみずから市場をゆがめたのは、極めて悪質だ。再発を防ぐ意味で、重い処分が妥当だ。

三井住友は営業優先の拡大戦略が、相次ぐ不正を生んでいるのではないか。法令順守の徹底はもちろん、収益至上主義から決別し、自浄作用を発揮すべきだ。

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