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[社説]防衛費GDP比2%は効果の徹底吟味を

岸田文雄首相が安全保障関連経費を加えた防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額するよう関係閣僚に指示した。防衛力の強化は喫緊の課題だが数字が先行している印象も否めない。真に必要で効果的な装備品や分野を厳選するよう求めたい。

日本は平和憲法と日米同盟のもとで軽武装国家を標榜し防衛費を抑えてきた。1976年にはGDP比1%を超えないと閣議決定した。21年度の補正予算を含む防衛費総額はGDP比1.09%。長く1%水準が続いており、戦後の安全保障政策の転換といえる。

首相指示は国防に有益な公共インフラや科学技術研究、サイバー、海上保安庁などの費用算入を念頭におく。各府省の予算も含め、政府全体で安保に生かす仕組みは理解できる。省益に走らず協力し合い、効率的な予算づくりの体制をいかに築くかが課題となる。

「防衛力の抜本的強化」の輪郭はまだみえない。当面は継戦能力の強化を優先し、足りない弾薬の購入や航空機、戦車といった装備品の稼働率の向上に軸足を置くようだ。現実の脅威を見定めて何を守り、何がどのくらい足りないかの基本を徹底してほしい。

そのうえで防衛力の中身と費用対効果の吟味が欠かせない。ロシアのウクライナ侵攻では、軍事と非軍事を組み合わせたハイブリッド戦が展開されるなど現代の脅威は多岐にわたる。国民の安全に資する防衛力を着実に整えていく中長期的な視点が大事になる。

先進国でも際立つ厳しい財政事情を考慮すれば、財源論議の先送りは政治の責任回避だと言わざるを得ない。現在のGDPで2%の達成には約11兆円が必要になる。首相が向こう5年間の予算規模と財源措置を一体で年内に決着させる方針を示したのは妥当だ。

防衛費の抜本的強化は負担のあり方を含めて国民一人ひとりが国の安全保障に正面から向き合う意識を持てるかが肝要である。政府・与党は丁寧な説明を重ねなければならない。閣僚の相次ぐ辞任などで国会論戦が深まらないまま決定されるのは許されまい。

政府は年内に国家安保戦略など防衛3文書をまとめる。相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有は大きな政策転換につながるだけに冷静で多角的な分析が要る。日本の危機を抑止するため、外交も含めた総合的な戦略づくりを急ぐべきだ。

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