[社説]就活テストの不正防止急げ

企業の採用試験のウェブ型適性検査で、学生から依頼を受けて受検代行をしたとして、関西電力社員の男が逮捕された。こうした行為は決して許されない。企業側も不正防止策を徹底すべきだ。
代行を依頼した女子学生も書類送検された。「自力でテストを受けたら通過できなかった」との趣旨の供述をしているという。
就職活動は社会人としてスタートを切る最初のステップだ。思うようにいかないこともあるだろうが、替え玉を頼むのは紛れもなく犯罪だ。仮に自分を偽った会社員生活を送っても、結局は会社や業務とのミスマッチにもつながる。人生を台無しにしかねない行為で、絶対にやめるべきだ。
逮捕された男はSNS(交流サイト)で、これまでに4千件もの代行をしたとのプロフィルを発信していたという。ネット上には代行を請け負う旨の別の書き込みも多くあった。今回の事件は警察のサイバーパトロールの中で発覚したもので、氷山の一角にすぎない可能性がある。
実際、企業側にも不正の横行への懸念があるようだ。採用支援のヒューマネージ(東京・千代田)の調査によると、企業の採用担当者の6割近くが、不正行為への懸念が「ある」と答えた。新型コロナウイルス禍でオンライン活用が進んだことも背景にある。
業務効率化にオンラインが果たす役割は大きく、不正防止のためだけに全面的に対面テストに戻す必要はないだろう。ただ、採用基準に合致しない社員が入ってくれば、組織運営上のリスクになりうる。学生側からも「公正に評価してほしい」との声はある。
対策として、人工知能(AI)で不審な行動を検知するといった方法が注目されている。いたちごっこになる部分があるとしても、座視することはできまい。再発防止を急ぐ必要がある。
旧来型の一括大量採用が遠因との見方もある。採用の多様化、複線化に地道に取り組むことが不正防止に資するだろう。
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