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[社説]逆風のなか成長投資続ける巨大IT企業

GAFAMと呼ばれる米巨大IT(情報技術)企業の成長が鈍化している。ドル高など経済環境の逆風に、従来主軸だった事業の成熟化やネット広告市場の構造変化が重なった。各社は逆風下でも積極投資を続け、新たな収益の柱を模索している。

成長投資が実を結ぶのか、まだ見通せない。投資家は巨大IT企業の右肩上がりの成長を当然視するのはやめるべきだ。経営の巧拙や各国政府による規制の行方などを見極めながら、各社への投資方針を判断する必要がある。

直近の7~9月四半期決算で、GAFAM5社合計の売上高は前年同期比9.2%増と2・四半期続けて1桁成長にとどまった。これは2016年以来6年ぶりだ。

新型コロナウイルス下で、パソコンなどのIT機器とオンラインサービスへの特需に沸いていた昨年夏が比較対象のため、伸び率が低いのはやむを得ない。加えてドル高で海外売上高のドル換算額も目減りし、増収率が5~6ポイント押し下げられた。ドル高の悪影響は年内いっぱい続くとみられ、留意すべきだ。

ネット広告市場では、個人のプライバシー保護の動きが強まっている。個人のスマホ利用動向から推測して効果が高い広告をSNS(交流サイト)に表示して稼いできたメタは、その手法を自由に使えなくなり窮地に陥った。

同社は2・四半期連続の減収で、広告単価も落ち込んで引き続き減益基調だ。仮想空間事業をSNSに代わる新たな主軸事業に育てようと巨額投資を進めるが、まだまだ時間がかかる。苦闘は当面続くとみてよい。

他の4社も主力の製品・サービスが世界に行き渡り、成長力が落ちている。新たな成長の柱の育成が欠かせず、投資意欲は旺盛だ。

アルファベットは企業向けクラウドIT基盤事業の強化と人工知能(AI)の事業化に力を入れる。iPhoneなどハード収入の割合が大きいアップルはサービス収入の拡大を急ぐ。アマゾン・ドット・コムはAIの研究開発とクラウドIT基盤に高水準の投資を続け、マイクロソフトもAI基盤の研究開発に巨額を投じる。

各社の研究開発投資の規模は年間数兆円に上り、日本で最大のトヨタ自動車の1兆円強をはるかに上回る。逆風でも成長投資にひるまない米巨大ITの経営を、日本企業は参考にしてほしい。

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