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[社説]男性の育児阻む壁を崩せ

岸田文雄首相は男性の育児休業取得率を2025年度に50%、30年度に85%にする目標を掲げた。いまは約14%にとどまっており、大幅な引き上げになる。

育児休業給付についても「産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を手取り10割に引き上げる」と述べた。産後は女性の肉体的、精神的な負担がとくに重い時期だ。最初から夫婦でともに担えれば、大きなプラスだろう。こうした方針は評価したい。

すでに「取得率100%を達成」「業務が増えるまわりの社員に手当を出す」といった先駆的な取り組みも生まれている。4月から育児・介護休業法の改正により、従業員1000人超の大企業は男性の取得状況の公表が義務となる。企業は取得を後押しするとともに、「取るだけ育休」にならないよう工夫してほしい。

そもそも育休は、長い子育て期間の一部にすぎない。男性が日常的に担えるようにすることこそが本丸だ。まずは、旧態依然とした長時間労働にメスを入れ、フレックスタイム制や在宅勤務など多様な働き方を定着させることがカギになる。こうした改革は、子育て中の人はもちろん介護中などの人にも役立つだろう。

もうひとつ、「育児は女性」という古い社会規範を払拭すべきだ。日本は先進国のなかで飛び抜けて、家事・育児分担が女性に偏っている。少子化の大きな要因だ。

この2つの根本改革が伴ってこそ、男性育休の意義も深まる。いずれも、過去の少子化対策でも繰り返し強調されながら実行が伴わなかった課題だ。

避けたいのは、取得率をかさ上げするために男性を数日だけ休ませる、といったケースだ。「男性は短期の育休」「女性は長期+日々の育児」では、古い社会規範を温存してしまう。

岸田首相は「社会全体の構造や意識を変える」と強調している。男女がともに仕事も育児も担えるよう、改革のリーダーシップをとってほしい。

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