[社説]元徴用工問題の突破口を開け - 日本経済新聞
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[社説]元徴用工問題の突破口を開け

日韓関係は韓国の政権交代を機に修復へと向かっている。それでも、懸案の元徴用工問題は解決のめどが立たず、摩擦の火種が残る。11月の首脳会談は早期に解決する方針で一致したものの、溝を残したまま越年するのは残念だ。

5月の就任以降、尹錫悦大統領は日本の重要性を一貫して訴え、対日政策を率いてきた。その姿勢は評価できる。米国を交えた3カ国の安全保障協力や相互往来を中心に、大きな前進がみられる。

元徴用工問題で尹政権は韓国司法が日本企業に命じた賠償を財団が肩代わりする解決案を検討している。1965年の日韓請求権協定に伴う日本の経済支援で恩恵を受けた韓国企業だけでなく、日本企業にも自発的な資金拠出や原告が望む謝罪を期待している。

一方、日本政府は賠償命令が国際法に反した判決であり、韓国側が解決すべき問題だとの立場を崩していない。日本企業も国家間で解決済みだと主張している。

韓国で差し押さえられた日本企業資産の現金化手続きは両国間の外交交渉が進むなかで一時的に留保された状態になっている。ただ、来年の前半にも現金化されるとの見方も残っている。そうなれば改善ムードは一気に暗転しかねない。問題の先送りは危うい。

両政府間には韓国向け輸出管理を強化した措置や韓国艦船による自衛隊機へのレーダー照射など懸案がいくつも残る。正常化の軌道に戻すには相互不信の払拭が欠かせない。その根源だった元徴用工問題の解決を急ぐ必要がある。

北朝鮮や中国に近い安保環境で自由や法の支配などを信念とする尹氏の価値観は日本と重なる。国際情勢は日韓関係の強化がこれまでになく求められる局面だ。

革新系野党が国会の多数派である韓国では尹政権による国民への説得がカギを握る。解決の機運を逃さず、地域安保や企業連携を守っていくのは日本の国益でもある。政府は大局的な見地から何ができるかを積極的に探り、韓国と協力して突破口を開いてほしい。

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