[社説]進む温暖化に対策の加速を

世界の温暖化ガス排出削減策は不十分で国際枠組み「パリ協定」の目標達成からほど遠い。国連機関の2つの最新報告書は、こんな厳しい現実を浮き彫りにした。
ロシアのウクライナ侵攻の行方など国際情勢は不透明だが、各国は結束して対策を加速すべきだ。 11月6日にエジプトで第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)が始まるのを前に、条約事務局と国連環境計画(UNEP)が報告書をまとめた。
条約事務局の報告書によると、現行の各国の削減目標を合わせても、2030年の世界の温暖化ガス排出は10年に比べ10.6%増える。UNEPのまとめでは、気温は21世紀中に、産業革命前に比べ2.4~2.6度上がる。
パリ協定は気温上昇を2度未満に抑え、1.5度以下をめざすとしている。これを上回ると災害リスクが急増する。COP27の議長国エジプトは「今こそ対策の実行が大切」と訴える。その通りだ。
日米欧などの先進国は09年、20年までに年1000億ドル(約14兆7000億円)の途上国支援をすることで合意したが、まだ実現していない。約束を果たすべきだ。
温暖化が原因とみられる異常気象で既に起きている被害に見合った、新たな資金提供を求める声も強い。災害復興や防災の技術・ノウハウの供与を含め、効果的な支援の仕組みを探る必要がある。
ロシアのウクライナ侵攻は温暖化対策を難しくする。ロシア産天然ガスの供給が減り、温暖化ガス排出の多い石炭への回帰が起きている。資源価格高騰による経済への打撃も無視できない。
気候問題の解決にはすべての国の協力が不可欠だ。南北間や、ロシアおよびロシアに一定の理解を示す中国、インドなどと西側諸国との間の分断は逆風となる。
日本は例年、会議で十分な存在感を示せていない。だが、アジアの新興・途上国の温暖化対策に技術・資金面で協力してきた実績を生かせば、連携強化へ果たせる役割も大きいはずだ。

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