「エレキのソニー」との決別 平井前社長、OBと距離
ソニー復活秘話㊤ 編集委員 杉本貴司
長らく不振にあえいできた日本の電機メーカーの中で、ソニーグループの復活が鮮明になっている。2021年3月期の連結純利益は初めて1兆円を超えた。2000年ごろからかつての輝きを失ったと言われてきたソニーはなぜよみがえったのか。ソニーの復活劇を導いた平井一夫シニアアドバイザー(前社長)が多くの単独取材で明かした証言から、その知られざる舞台裏をひもとく。
12年4月に社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した平井氏。まさに嵐の中での船出だった。就任直後に発表した12年3月期の連結決算は4年連続の最終赤字。赤字額は過去最大の4566億円にのぼった。株価は1000円を下回り32年ぶりの安値圏に突入した。
かつてない危機的な状況に、その年の6月に開いた株主総会では容赦ない批判の声が飛び交った。「1000円割れは屈辱だ」「現状認識が甘い」
周囲の懐疑論を生んだ一因に、平井氏の経歴があったことは事実だろう。平井氏は1984年に音楽子会社のCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に入社した。その後は10年以上、音楽ビジネスに携わり歌手の久保田利伸氏の全米デビューなどをバックアップしてきた。
帰国子女でネーティブ並みの英語を操ることから、混迷を極めていたゲーム子会社の米国事業の立て直しに携わることになり、ゲーム畑を長く歩むこととなる。ソニーの本丸と見なされてきたエレクトロニクス事業に本格的に携わるようになったのは、2011年に副社長に就いてから。社長になるわずか1年前のことだった。
つまり、ずっとソニーの「傍流」を歩んできたわけだ。そんな新社長にどん底のソニーを立て直せるのか
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