[社説]自民は懸案処理へ説明尽くせ

自民党が26日、都内で党大会を開いた。日本周辺の安全保障環境は厳しさを増し、少子化対策やエネルギー問題など重要な課題が山積している。与党として政府の政策実行を後押しし、国会審議などを通じて有権者の理解を広げていく役割が求められている。
岸田文雄首相(党総裁)はあいさつで、「この10年で日本が置かれている状況は大きく変化した。新型コロナ後の日本経済再生、エネルギー安定供給と脱炭素の両立、外交・安全保障、子ども・子育て政策。いずれも先送りできない課題ばかりだ」と語った。
ロシアはウクライナ侵攻から1年を経ても、国連憲章や国際法の順守を求める世界各国の声を無視し続けている。北朝鮮が核・ミサイル開発を加速し、中国は周辺国への軍事圧力を強めている。
自民党は昨年4月、防衛力の抜本的強化に向けた提言をまとめ、①北大西洋条約機構(NATO)諸国の国防予算の国内総生産(GDP)比目標(2%以上)も念頭に防衛費を増額②反撃能力の保有――といった戦略を打ち出した。
7月の参院選で党公約の柱とし、昨年末の国家安全保障戦略など関連3文書の改定につなげた。政府は防衛費を大幅に増やす狙いや中身を丁寧に説明し、野党の声にも耳を傾けていく必要がある。
首相が最重要政策と位置付ける子ども・子育て政策は、議論が迷走気味だ。茂木敏充幹事長が国会質疑で児童手当の所得制限撤廃に言及し、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式」への意見も割れている。
関連支出の倍増をめざすとした首相の国会答弁は「基準や考え方が不明確」と指摘された。国会審議のさなかに、与党内で調整不足が露呈するようでは困る。
4月には統一地方選や国政の補欠選挙が予定されている。与党は物価高やエネルギー、賃上げ、子育て支援、投資促進など国民の関心が高い政策テーマで具体策を明示し、野党と様々な選択肢を積極的に競い合ってもらいたい。