[社説]英国の若き新首相を待つ難題

政治経済の混乱が続く英国で、元財務相のリシ・スナク氏(42)が新首相に就任した。同国初のアジア系、過去200年で最年少の首相だ。疲弊する経済の再建や国際的な信頼回復に向け、強い指導力を発揮してほしい。
スナク氏は就任後、首相官邸前で演説し「現在、私たちの国は深刻な経済危機に直面している」との認識を示し「経済の安定を政策の中心に据える」と語った。
英国の財政は新型コロナウイルス禍への対応で悪化し、さらにトラス前首相が財源の曖昧な減税策を打ち出し市場を混乱させた。新首相の喫緊の課題はしっかりした経済政策を打ち出し、信頼を取り戻すことだ。
物価高騰に苦しむ国民への一時的な支援は必要だ。しかし、財政の規律は保たなければならない。そのために減税の完全凍結や老齢年金の上げ幅縮小など、財政再建に向けた痛みを伴う措置を求められる可能性もある。
スナク氏は約1カ月半前に結果が出た党首選で、トラス氏に敗れたばかりだ。今も党内での支持は必ずしも盤石ではない。
支持率で上回る野党・労働党は解散総選挙を求めている。政策を多方面に粘り強く説き、政権基盤を安定させることが欠かせない。
国の外に目を転じても、難しい課題が目白押しだ。
スナク氏はトラス氏に比べ、欧州連合(EU)に対して強硬な考えを持たないとされる。EUとの間の人やモノの移動制限が、英国のインフレ率を押し上げているとの指摘もある。移民受け入れや通関手続きなどを緩和することができれば、英国とEUの双方に良い影響が出るのではないか。
ロシアへの強硬姿勢は保たれる見通しだ。一方、中国に対しては人権問題などを非難しつつ、経済分野で一定の関係を維持する方向を予想する向きもある。
中国を隣国に持つ日本を含め、民主主義の価値観を共有する国・地域との連携を損なわぬよう、思慮深い行動を求める。