[社説]首長と議員選ぶ重み考えよう

新型コロナウイルス禍を経て初めての統一地方選が始まった。コロナ禍の中では感染対策や医療体制、生活支援といった幅広い分野で自治体の力量が試された。首長や議員を選ぶことは、日々の暮らしはもちろん、時には命に関わることだという重みを改めて認識し、納得のいく選択をしたい。
投票は知事と道府県議、政令市長と政令市議が4月9日、市区町村長と市区町村議が4月23日に行われる。約1カ月にわたる選挙戦は、普段は見過ごしがちな身近な課題に目を向け、地域のあり方を見つめ直すよい機会になろう。
人口減少と高齢化の影響は地方の現場に凝縮している。人材や財源が限られる中、行政サービスの優先順位をどうつけるか。地域が持続していく活力を保つには何が必要か。地域の将来を見据えた論戦の深まりを期待したい。
身近なリーダーを選ぶ統一地方選の投票率はかつて国政選挙より高かった。だが統一選から外れる選挙が増えたこともあり、投票率は時を追うごとに低下し、前回は政令市長選を除き50%を割った。政治離れの立て直しは本来、関心があってしかるべき身近な選挙から始めなければならない。
議員のなり手不足も深刻だ。前回、道府県議選と町村議選は当選者の4人に1人が無投票当選だった。これは議会制民主主義の根幹に関わる問題である。地域の将来を考える女性や若者は少なくない。多様な人材が挑戦できる環境を整えることが大切だ。
選挙戦では地方分権のあり方も考えたい。コロナ禍は独自の感染対策で名を上げる自治体を生む一方、国と自治体の連携がうまくいかない面も浮き彫りにした。30年にわたって進めてきた地方分権の一つの帰結といえよう。
行政デジタル化では自治体独自の工夫がシステムの共通化を妨げた面もある。効率や実効性から、国が統一した方がよい業務と、自治体が独自性を発揮した方がよい業務をどう整理し直すか。住民利益の観点から議論を深めたい。