[社説]中国新体制は民間活力を最大限生かせ

中国は全国人民代表大会(全人代)で2023年の経済成長率目標を「5%前後」とした。未達に終わった22年目標「5.5%前後」から下げたのは妥当である。厳しい経済環境下、持続可能な景気浮揚をめざすなら、退任する李克強首相が強調してきた民間企業、中小企業の活力を引き出す真の改革・開放政策が今こそ必要だ。
22年成長率実績は3%で、当初目標にとどかなかった。2月、国際通貨基金(IMF)は中国の23年成長予測を引き上げ、5.2%とした。新型コロナウイルスを抑え込む「ゼロコロナ」政策の解除による消費回復を見込むためだ。
とはいえ小康状態にある中国での感染状況がこのまま終息に向かうかどうか予断を許さない。「第2波」が来れば、再び消費は落ち込みかねない。急速な少子化、社会保障関係費の増大、過剰債務、不動産不況など課題も山積している。政府活動報告は解決に向けた十分な処方箋を示していない。
一方、習近平国家主席は全人代に先立つ会議で民間企業、業界団体、学会などにも共産党組織を置くよう明確に求めた。共産党はアリババ集団を含む民間の大手電子商取引、IT(情報技術)、金融企業への介入を強めている。
共産党が民間企業内の党組織を利用して経営の意思決定に影響を及ぼすばかりではなく、地方政府などを通じた株式取得で民間側に直接、介入できる仕組みも整いつつある。これでは民間の力は発揮できない。そればかりか外資も中国進出をためらうだろう。
近く就任する新首相が率いる新体制には、重い責任がある。国有企業を偏重して民間セクターに圧力を加える「国進民退」といわれる政策は直ちに撤廃すべきだ。民間活力を最大限に生かせる枠組みづくりが肝要となる。
23年の中国の国防費は前年比7.2%増で、4年ぶりの高い伸びになった。政府活動報告には「新時代の党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、『独立』反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和的統一への道を歩む」と明記している。24年初めの台湾総統選も見据えた威嚇を含む軍拡でもある。
中国の国防費は日本の防衛予算案の4.5倍に当たり、詳しい内訳、研究開発費も不透明だ。台湾問題に世界の関心が集まる中、経済成長を大幅に超す軍拡は周辺国の脅威になる。中国はまず国防費透明化に真剣に取り組むべきだ。