[社説]五輪の検証が招致の出発点だ

東京五輪・パラリンピックの運営をめぐるガバナンス(統治)の不全は、どこまで広がるのか。
会計検査院はこのほど、開催経費が大会組織委員会の公表額より2割も多い1兆6989億円にのぼったと明らかにした。
選手の強化費、ドーピング対策費など計約2800億円を大会との関係が深い国の経費に認定した結果だ。検査院は、経費総額の情報を事前に取りまとめる仕組みの整備を国に求めたという。
五輪ではスポーツビジネスに強い組織委元理事がスポンサー企業からの多額の受託収賄の罪で起訴された。さらに、テスト大会にからみ広告会社などが談合を行い受注調整を繰り返した疑いで、東京地検などが解明を進めている。
東京都は談合疑惑について、当時の契約のあり方に関し再調査を実施中だ。汚職事件や経費のチェック体制、透明性の確保についても、すでにチームで作業を進めるスポーツ庁とも協力し検証を進めるべきだ。失った国際的な信頼を取り戻し、今後の大規模イベントへの国民の理解を得るためにも、実態の解明とともに、再発防止策を打ち出す必要がある。
一連の不祥事を受け、2030年の冬季五輪の招致をめざす札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は20日、「積極的な機運の醸成活動を当面休止する」などと発表した。
JOC幹部は「特定の代理店に丸投げするような構造から決別する」とも述べた。スポーツ庁が今後打ち出す指針に基づき、札幌市も来年度の早い時期に、大会の運営体制を見直すという。その上で、市民や全国を対象に意向調査を行うとしている。
贈収賄や談合、さらに不明朗な経費の膨張に加え、東京五輪では食材の大量廃棄も指摘された。都が新設した競技施設は大会後、赤字運営が続く。
特別法で独立の監査機関を新設した24年のパリ五輪の例も参考に、東京への猛省と検証を札幌招致の出発点とすべきだ。
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