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[社説]地価上昇の持続力を見極めよ

地価の回復傾向が鮮明になってきた。商業地は繁華街に人出が戻り、都市部を中心に地価が上昇する地点が増えている。住宅地の需要も高い水準が続く。ただ金利の先高観や海外マネーの動向など先行きは変調の兆しもある。地価上昇の持続力を見極めたい。

国土交通省がまとめた1月1日時点の公示地価は、商業地、住宅地とも2年連続で上昇した。すべての用途の全国平均は伸び率が1.6%となり、上昇地点は全国の半数を超えた。いずれも新型コロナウイルスの流行前の水準を上回り、地価回復に力強さが戻ってきたといってよい。

特に東京の銀座や新宿、大阪の梅田やミナミといった繁華街は、前年の下落から上昇に転じた地点が目立つ。伸び率はまだわずかだが、インバウンドが本格的に復活すれば上昇に弾みがつく。

一方、東京の丸の内などのオフィス街は回復の足取りが重い。東京都心は今年、オフィスが大量供給されるためで、空室率は高止まりしている。在宅勤務の定着で職場のあり方を見直す動きが続いている影響もあるだろう。

地方では札幌、仙台、広島、福岡の「札仙広福」とよばれる4都市のうち、特に再開発が進む札幌と福岡に投資マネーが流入し、上昇率が高い。北海道と九州は半導体工場の立地もあり、中心都市としてなお成長の余地がある。

三大都市圏と札仙広福を除く地方では住宅地が28年ぶりに上昇した。県庁所在地のマンションに周辺から移り住む「県都集中」が各地で広がっているためだ。人口減少下で集住が進むのは望ましい。上昇地点は限られ、地方全体でみれば上昇地点より下落地点の方が多くなるが、やむをえない。

今後、日銀が金融緩和の修正を進めれば旺盛な住宅需要に陰りが出よう。世界的な金利高や米欧の金融不安で海外の不動産マネーが絞られれば投資先の選別が厳しくなり、地価の二極化が一段と進む可能性がある。そうした環境を念頭に地域活性化策を考えたい。

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