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[社説]企業は信頼向上へ気候情報の積極開示を

各国の市場関係者が集まりESG(環境・社会・企業統治)の情報開示ルールをつくっている国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、気候変動に関する開示基準を2024年から使うよう求める方針を決めた。

日本企業は積極的に対応し、国際社会や市場の信頼を高めるよう努めてほしい。

日本は東京証券取引所プライム市場の企業を中心に、欧米金融当局などが推奨するルールに準じて気候情報の開示が広がってきた。ただ、開示の範囲にばらつきがあるなど課題も大きい。

ISSBルールは自社の事業や使用電力に由来するものだけでなく、「スコープ3」と呼ばれる取引先などサプライチェーン(供給網)全体の温暖化ガス排出量を示すよう求める。

供給網の温暖化ガス排出量の測定方法は定まっていないが、世界の優良企業は一定の前提を置いたり推定値を使ったりしながら、情報開示を試みている。温暖化ガスデータの収集ツールを開発するベンチャー企業もある。

日本ではリコーのように取引先と連携し、「スコープ3」情報を有価証券報告書で開示する企業が出始めた。

ISSBルールの開始に備え、こうした先駆的な事例を広く共有する仕組みをつくりたい。東証や金融庁、さらには投資家の代表として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などが協力すべきだ。欧米に視野を広げた包括的な情報が必要だ。

環境関連の取り組みや開示は、企業の存続や競争力に直結する。米アップルは取引先に脱炭素の取り組みを強く求めている。欧州を中心に気候変動対策を企業評価の尺度のひとつとしたり、脱炭素の加速を求める株主提案を出したりする投資家は増えた。

ISSBの決定を採用するかどうかは各国の任意だ。実情に応じてルールの修正もできる。ただ、日本を含む主要国政府の後押しを受けている組織であり、市場参加者の注目は大きい。積極的に取り入れれば日本市場にグローバルな投資を呼びこみ、企業の成長を促す効果が見込める。

今後は気候変動だけでなく、生物多様性の保全など広く環境に関する情報開示ルールの策定が急ピッチで進みそうだ。日本の政府も企業も、基準づくりに主体的に加わっていくべきだ。

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