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[社説]FRBは金融システムと物価の安定両立を

米連邦準備理事会(FRB)は21〜22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25%の利上げを決めた。米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻で金融システムは不安定になっている。FRBは政策運営に細心の注意を払うべきだ。

利上げは9会合連続で、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は4.75〜5%と2007年以来の高さになる。

FRBは昨年11月まで0.75%の大幅利上げを続けた後、12月から利上げ幅を徐々に縮めてきた。だがインフレは収まらず、パウエル議長が7日に利上げを再加速する姿勢を示した直後に西海岸のSVB、米東部のシグネチャー・バンクが相次ぎ経営破綻した。

利上げを続ければ銀行経営を圧迫しうる一方、止めれば金融不安は深刻との臆測を広げかねず、FRBは難しい判断を迫られた。

0.25%の利上げは、しつこいインフレや米雇用の強さも総合判断すれば妥当だろう。

ただ、SVBの経営危機を見逃し、利上げの加速に言及したパウエル議長への風当たりは強い。FRBの監督責任を問う声も多く、原因究明と対策が求められる。

2行の破綻に伴いFRBは新たな緊急融資枠を設け、米財務省なども預金の全額保護を決めた。08年のリーマン危機の教訓をいかした迅速な対応で、パウエル議長は「銀行システムは健全で強靱(きょうじん)だ」と強調した。

金融不安が波及して預金流出に見舞われたスイスの金融大手クレディ・スイスも19日、同国当局が介入する形で金融大手UBSによる救済買収が決まった。日米欧の6中央銀行も、市場へのドル供給で協調すると発表した。

一連の対応で市場はひとまず落ち着いたが、金融不安はくすぶる。不安心理が結果的に引き締めの効果をもたらすとパウエル議長は指摘し、FOMCの声明文も先々の利上げ姿勢を弱めた。

ただインフレが収まらず利上げが続けば、金融不安とのはざまで市場が揺れる局面も増えよう。FRBは国内外に目配りして市場と周到に対話し、物価と金融システムの安定を両立させてほしい。

リーマン危機後の規制の不徹底を批判する声もある。不安が拡散しやすいSNS(交流サイト)時代の預金保護のあり方も新たな論点に浮上した。金融規制やルールをめぐる議論も待ったなしだ。

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