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[社説]IPCC報告が示す温暖化対策の緊急性

温暖化による気象災害や食料危機、紛争などの悪化を防ぐための時間は、わずかしか残されていない。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた第6次統合報告書は、温暖化対策の緊急性を強く訴えた。

報告書は気候変動をめぐる今後の国際交渉の土台となる。日本は主要7カ国(G7)議長国として真剣に受け止め、中国を含む20カ国・地域(G20)とも連携して対策を加速する必要がある。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前に比べた地球の平均気温の上昇を1.5度以内にとどめる目標を掲げる。

だが、報告書によると気温は既に1.1度上がっており、2030年代前半にも1.5度に達する可能性がある。気温が目標を超える期間を短くとどめ、下降に向かわせることが重要だ。

それには世界の温暖化ガス排出を25年までに減少に転じさせ、35年の世界の排出量を19年比で約60%減らさねばならないという。

パリ協定のもと、各国は25年までに35年の新たな削減目標を提示することになっている。報告書の数値は重要な指標となろう。

日本の現行目標は30年度の排出量を13年度比で46%減らし、50%減をめざすというものだ。国際社会から一層の上乗せを求められる可能性がある。見直しの検討を怠ってはならない。

報告書は21年10月までのデータに基づいており、ロシアのウクライナ侵攻の影響は含まない。現実にはエネルギーの安定供給を確保するため、化石燃料の利用減を先延ばしする動きもある。

石炭火力発電への依存度が高いアジアの途上国などでは、再生可能エネルギーへの転換や省エネの投資が不足している。パリ協定の目標達成は困難を伴う。

だが、諦めるわけにはいかない。IPCCのホーセン・リー議長は対策の遅れがもたらす熱波や洪水などの被害拡大に警鐘を鳴らすとともに「報告書は希望へのメッセージでもある」と強調した。

再生エネルギーや蓄電池のコストは劇的に下がった。水素製造・利用技術や、火力発電所から出る二酸化炭素(CO2)を吸収・貯留する技術の開発も進む。

日本は化石燃料依存を減らしつつ、こうした技術の普及へ積極的な役割を果たすべきだ。実績を積み上げ、被害や損害の軽減につなげることが大切だ。

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