古賀信行 私の履歴書(30)変わりゆく街
野村ホールディングス名誉顧問
[有料会員限定]
若い頃「会社を辞めようかな」とつぶやくと、妻はきまって「何する? 塾でもやろうか」とうれしそうに言ったものだ。ばかばかしくなって会社を辞めるのをやめた。
家のことは全て妻に任せっきりだった。企業人として今日までやってこれたのは、妻のおかげだ。感謝しかない。息子と娘、それぞれの連れ合い。3人の孫。古賀ファミリーは9人になった。
野村証券に入ってもうすぐ50年目になる。名誉顧問の任期は2025年3月...

世界的にも有名な大手証券グループのトップを長年勤めた古賀信行さんは、激動の金融市場を乗り切ってきました。経団連など金融・証券業界にとどまらない財界活動で新型コロナ禍に苦しむ日本経済の再生にも取り組みました。炭鉱の街、福岡県大牟田市で生まれ育ち、幼少期に激しい労働争議や炭鉱爆発事故を目の当たりにします。鹿児島市のラ・サール高校から東大に入学。就職した野村証券では人事や経営企画といった黒子役のほか、株式や債券の引き受けを経験して社内外に人脈を築きます。バランス感覚と広い知見はバブル経済崩壊後に野村証券が市場での地位を固めるのに欠かせないものでした。