[社説]政治への不信深める議員辞職

またしても政治とカネをめぐる不祥事が露呈した。自民党の薗浦健太郎衆院議員(離党)が政治資金収支報告書で収入を過少記載した責任をとって議員辞職した。
この問題は東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで捜査している。議員自ら過少申告に関与していたなら悪質であり、議員バッジを外すのは当然だ。
薗浦氏の関連政治団体が2017年以降に開催した政治資金パーティーの収入を約4000万円少なく記載した疑いがある。特捜部は本人から任意で事情を聴いており、略式起訴するとみられる。
罰金刑が確定すれば議員を失職する。そうなる前に自ら進退を決めたということなのだろう。だが辞めたからといって責任が軽くなるわけではない。
薗浦氏は先月末、「(収支報告書の作成は)秘書がすべてやっていた」「秘書からの事前報告はなかった」などと説明した。しかし特捜部の任意聴取では一転、秘書との共謀を認めたとされる。
事実なら国民に噓をついていたことになる。過少申告は多額で、しかも長期間にわたって繰り返されていた。「うっかりミス」で済むレベルではなく、虚偽報告と言わざるをえない。使途を含め、自ら説明する責任がある。
最近の政治資金のずさんな管理や不透明な支出は目に余る。故人の名前で収支報告書を出すなどした寺田稔氏が総務相を辞任。秋葉賢也復興相は親族への事務所家賃支払いなどが問題になっている。岸田文雄首相も領収書の不備を指摘された。
収支報告書は国会議員の活動を国民がチェックできるよう、「財布」をガラス張りにするためにある。記載が噓であれば制度の意義は損なわれ、ひいては政治への信頼が失われる。安全保障や増税で国民に負担を強いるにもかかわらず、由々しき事態だ。
一議員の不始末と幕引きをするのではなく、与野党すべての国会議員がその重みを肝に銘じて襟を正さなければならない。