[社説]プーチン氏の暴走が心配だ

ロシアのプーチン大統領が、一方的に「併合」を決めたウクライナ4州に戒厳令を導入し、ロシア全土で警戒を高める大統領令に署名した。
戦況が劣勢なため事態をエスカレートさせるとともに、自国民にも覚悟を求める決断を下したのだろう。裏を返せば「特別軍事作戦」と名づけたウクライナ侵攻が失敗だったことを自ら認めるものといえる。
それだけロシア軍が苦境に陥っていることを示唆している。暴力の連鎖を断ち切るため国際社会は圧力をかけ続けねばならない。
一方で、一連の措置がプーチン氏が引くに引けない状態に追い詰められた結果とすれば、危険な兆候でもある。これ以上の暴走を防ぐためにも同政権との話し合いの手段を探ることも重要だ。
戒厳令により、現地では強制的な移住、資産の没収、市民の拘束などが容易になる。男性についてはロシア側の兵士として前線に送ることを計画しているとの情報もある。
いずれもウクライナ人の人権を無視した非道な行為だ。断じて許されず、状況を監視し続ける必要がある。
ロシアはウクライナのインフラ施設への攻撃を激化させている。同国は発電能力の約4割を失い、政府は電力使用の制限を決めた。
暖房やお湯のない生活を強いられている市民も多い。彼らを支援する体制づくりが急務だ。すでに現地は本格的な冬を迎えつつある。日本政府も暖房機器など人道支援を早期に実現してほしい。
ロシア全土で警戒を高める大統領令が発令されたことで、ロシア国民は集会やデモといった行動の自由を制限され、戦闘への支持をこれまで以上に強制されることになりそうだ。
9月に部分的動員が発表されて以降、政権批判が高まっているだけに、大規模な反政府運動に発展する前に先手を打ったといえる。ロシアでの人権弾圧のレベルが上がることにも注意を払いたい。

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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