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[社説]信用不安の沈静化と銀行規制の再点検を

スイスの金融機関最大手UBSが19日、同国2位クレディ・スイス・グループの買収を決めた。米シリコンバレーバンク(SVB)破綻による金融不安が欧州に伝わり、かねて経営不振のクレディは資金流出が加速していた。

政府の支援も受けたUBSの買収決定により、国際的な金融危機の懸念はとりあえず封じられた。しかし、市場の動揺は続く。米国では破綻したシグネチャー・バンクの預金と資産の一部の引受先が決まり、世界の6中央銀はドル供給を強化した。官民の迅速な取り組みを続けてほしい。

UBSのクレディ買収はスピード優先だったため、問題含みであることは否定できない。

まず、低い買収価格が示唆するように、クレディの資産内容には不透明な部分が残る。今後、損失が発覚する懸念もある。

また、金融監督・規制の課題も浮き彫りになった。

クレディは世界の銀行監督当局が「グローバルなシステム上重要な銀行」と認定した30社のひとつだ。当局が厳しい資本・業務規制を課して経営を安定させ、金融システムの動揺をくい止める役割が期待されていた。2008年のリーマン・ショックの教訓から導入された制度だ。

そうした「重要行」が信用不安を招いた事実は重い。国際的な資本・業務規制に抜け穴がなかったかどうかなど、改めて多角的な検討が必要だ。買収後は単純合計で、スイスの経済規模の2倍強の資産を持つ銀行が誕生する。巨大金融グループを適切に監督する重要性はいっそう高まる。

今回はスイス一国の買収劇だったが、複数の国・地域の銀行がかかわる場合、当局どうしの迅速な意思疎通が欠かせない。連絡網の整備なども急がれる。

UBSのクレディ買収は、資本市場への説明責任という意味でも問題を残す。

大型買収に必要な株主の承認が不要となるよう、政府が措置をとるという。また、クレディが資本増強の目的で発行していた特殊な債券は無価値になる。同債券を発行している銀行は他にもあり、今後の信用不安の火種になりかねない。危機回避の買収で、株主や債権者をどこまで守るかといった議論を深める必要がある。

目標とする23年末までに買収を完了するには、UBSやクレディの丁寧な説明も欠かせない。

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