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[社説]ネット言論空間の健全化へ知恵を絞れ

イーロン・マスク氏が10月末に買収した米ツイッターで混乱が続いている。運営体制が崩れ悪質な投稿が横行する一方、同氏を取材するジャーナリストのアカウントを急に停止して批判を招いた。嫌気した大企業が広告出稿を止め、収益が悪化している。米国では存続を危ぶむ声さえ出ている。

そんな中、マスク氏は20日、自身のツイートによるアンケート結果に従い、後任が見つかり次第、最高経営責任者(CEO)を辞任するとツイートで宣言した。今後はソフトウエアとサーバーの運営だけに関わるという。

どういう経営体制になるにせよ、個人だけでなく公人や行政機関も多用する公共性の高い情報基盤が崩壊しては困る。オーナーとして引き続き統治権を持つマスク氏や後任の経営者は、安定した運営体制の構築と情報内容の安全性確保に尽力してほしい。

買収によるツイッターの混乱やフェイスブック上の偽情報の氾濫は、市場原理だけでは民主主義を支えるネット言論空間の健全性を適切に確保できないことを示した。各国の政策決定者やネット企業は、ネット言論空間の健全性、言論の自由、企業収益という三方をいかにして並立させるか、一層知恵を絞るべきだ。

米最高裁は10月、利用者の投稿した有害情報を表示したネット企業が責任を負うかどうか審理することを決めた。米国で続いてきたネット企業の免責原則が根本的に変わる可能性がある。

欧州連合(EU)は11月「デジタルサービス法」(DSA)を発効させた。域内利用者数が4500万人を超える大手ネット企業に、差別発言や詐欺、個人や子供を危険にさらす有害情報などの流布を防ぐことを義務付けた。

日本も7月施行の改正刑法で侮辱罪を厳罰化した。10月施行の改正プロバイダ責任制限法では、個人を中傷する投稿者を特定しやすくした。ネットの業界団体は10月に偽情報の発見と周知を担う日本ファクトチェックセンターを発足させた。ヤフーはコメント欄の投稿に携帯電話番号の登録を必須とする新たなルールを設けた。

EU型の法規制に副作用はないか。日本型の民間主体の自主規制に効果はあるのか。試行錯誤は始まったばかりだ。守るべき言論の自由のあり方も含め、健全な言論空間のための枠組みを社会全体で探り続けていきたい。

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