[社説]副業を無理なく身近な制度に - 日本経済新聞
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[社説]副業を無理なく身近な制度に

自身のスキルを磨き、試す場として副業に関心を持つ働き手は多い。リモートワークの普及で地方の仕事もしやすくなった。企業は支障がない限り、副業を認めて社員の成長を後押しすべきだ。

帝国データバンクが2021年2月に実施した調査によると、兼業・副業を認めている企業は約18%にとどまった。17年の調査からは約8ポイント上がったが、大企業ほど認めない割合が大きいという。

一方、働き手の関心は高い。リクルートの今年1月の調査では兼業・副業をやってみたい人は約4割にのぼる。理由では副収入への期待が4割弱あったのに対し、新しい視点やスキルを得たいという人もそれぞれ3割近くいた。

経営側からすれば自社の業務に集中してほしい思いはあるだろう。だが同質な発想からはイノベーションは生まれない。社員が社外で多様な経験を積み、本業に生かすという効果を重視すべきだ。

ライオンは20年から副業を認め、社員と地方の中小企業を橋渡しするなど仕事探しも支援する。「社内に10年いても得られないような知見を短期間で獲得する効果があると期待している」(掬川正純社長)からだ。

カシオ計算機は50歳以上の社員については、週2日まで他社と雇用契約を結んで兼業することを認めている。自身のキャリアを広げ、定年後の仕事の選択肢が増えるよう後押しする。

企業の枠を超えて人材が行き来する副業は、柔軟な労働市場をつくるうえでも重要だ。成長分野へ労働移動が進むきっかけになる。

厚生労働省は7月、副業・兼業に関する指針を改定し、ホームページなどで副業の可否や条件を公表するよう企業に促している。多様な働き方を認めることは人材獲得でも有利になる。

一方、副業には働きすぎで健康を害するリスクも伴う。午前0時以降の仕事を禁じるなど対策を講じる企業もある。無理なく働く工夫を労使で考え、副業を身近な制度として定着させたい。

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