時代遅れのワクチン行政 内向き志向、革新阻む
コロナ医療の病巣(5)
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日本での新型コロナウイルスのワクチン接種は世界に大きく出遅れた。科学技術立国をうたいながら国内で実用化のメドも立っていない。時代錯誤なワクチン行政に根深い病巣がある。
【前回記事】
国内でワクチンを流通させるには「国家検定」という関門をくぐりぬけなければならない。国立感染症研究所による抜き取り検査で、品質が保たれているかどうかを出荷ごとにチェックする。製品によっては2カ月ほどかかる。
日本製薬工業協会は昨年9月、ワクチンの早期実現に向け提言書を公表した。世界を見渡せば、国が威信をかけ前例のないスピードで開発競争が進む折だった。承認審査の迅速化や包装表示の簡略化に加え、焦点だった国家検定も書面審査で済むよう求めた。
パンデミック(世界的大流行)という一刻を争う際に、有事向けの「ワクチンルール」が示されていなかった日本。製薬会社が多額の投資を要する開発に二の足を踏むのも無理はない。
日本の感染症対策、ならびにワクチン行政は、戦後の一時期、死因トップだった結核という国民病を克服した成功体験から抜け切れていない。厚生労働省の担当窓口が今も「結核感染症課」を名のっているのもそのあらわ...
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