[社説]中国経済浮揚へ市場重視に大胆な転換を

中国共産党大会は急減速する経済の立て直しが重要課題である。だが3期目入りが確実な習近平総書記(国家主席)の体面ばかりが優先され、疲弊する国民生活を真摯に議論する雰囲気に乏しい。経済浮揚には、市場を重視する大胆な政策転換が不可欠である。習氏は実効性ある新しい発展モデルを探る旗振り役になるべきだ。
世界に衝撃を与えたのは18日の予定だった7~9月の国内総生産(GDP)公表の見送りだ。9月貿易統計、主要70都市の新築住宅価格の発表もない。前代未聞の事態は中国の国際信用にかかわる。
世界2位の経済大国の実体経済が不明では、内外の企業の経営計画づくりに支障が出る。集権に成功した習氏の権威への配慮から悪い数字を出せないとすれば、党大会での経済論議も期待できない。
地方政府が国有地の使用権を開発業者に高値で販売して財政収入を得る住宅・不動産主体の発展モデルは破綻しつつある。習政権の政策はそれを加速した。新築住宅の販売面積は前年に比べ2~4割も減る異常事態が続いた。不動産関連はGDPの2、3割を占めるだけに影響は甚大だ。
習氏は今回、新たな発展モデルとして「中国式現代化」を打ち出した。共産党の指導を重視する中国独自の発展モデルだという。その実態は、米欧自由主義に対抗する習氏とその路線への忠誠度を試すツールの側面が強い。実効性ある精緻な経済モデルというより、政治的な思惑の産物なのだ。
国有企業重視の色が濃く、中国経済を支える大多数の民間企業の意欲を引き出す政策でもない。自力更生など内向きの雰囲気とともに、党の管理が強まれば、民間企業の自由度は下がり、生産性も上がらない。いまは成長の原動力だった市場重視こそ肝要である。
アリババ集団などIT大手への圧力の行方も見通せない。成長企業のけん引がなければ、技術強国は絵に描いた餅になる。米中対立で高性能半導体の確保さえままならず、若者の失業率も2割近いのに、政治主導の「企業いじめ」に何の意味があるのか。
14億人の中国市場は魅力的だが、人口減少は既に始まっている。インフラ投資に頼る従来の手法では安定成長は実現できない。今年の成長率目標「5.5%前後」も達成は難しい。経済浮揚のカギは、民間企業の意欲を最大限引き出す市場重視への大転換である。