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[社説]世界遺産の意義見つめ直そう

世界遺産条約が国連教育科学文化機関(ユネスコ)で採択されて今年で50年。世界で1100件超、日本でも法隆寺や原爆ドームなど25件が登録され、認知度も飛躍的に上がった。一方で維持管理などの課題も目立ってきている。半世紀の節目に、世界遺産の意義を見つめ直したい。

条約の本来の理念は、人類共通の価値ある遺産を守り、保存していくための国際協力体制をつくることだ。その意味で世界遺産登録は、あくまではじめの一歩といえる。だが誘客効果が大きいだけに、登録自体をゴールと位置づけるような風潮が依然目立つ。

登録までは地元自治体や経済界が熱心に取り組む一方、登録が決まった後は関連予算が削られるといった例が指摘されている。遺産の適切な保全には専門人材が不可欠なのに、人員が足りていないとの声も根強い。改めて維持管理体制の点検と補強が必要だろう。

観光ラッシュのひずみも各地でみられる。屋久島では登山客の急増が植生の傷みやゴミ放置を招いた。知床の観光船沈没事故は、観光客を当て込んだずさんな業者の存在を浮き彫りにした。

開発と景観の両立も課題だ。福岡県の沖ノ島は2017年の登録時、世界遺産委員会から周辺での風力発電の全面禁止を勧告されたが、近隣には洋上風力の好適地がある。遺産付近での高層マンションやホテルの増加に悩む地域も多い。政府や自治体はこうした諸問題に連携して対応すべきだ。

15年登録の「明治日本の産業革命遺産」や、今後の登録を目指す「佐渡島の金山」では、歴史認識を巡る日韓のあつれきが表面化した。もとより世界遺産は国際政治と無縁ではないものの、協調が主眼の舞台での衝突は好ましくない。日本として主張すべきはしつつ、冷静な議論を目指したい。

世界遺産条約は、遺産を将来世代に伝承することを締約国の義務と定める。単に「我が町の見どころ」ではなく、未来に引き継ぐ宝としてとらえ直すときだ。

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