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[社説]力強さ欠く成長が促す賃上げ

プラス成長には戻ったが、力強さを欠く日本経済の課題は多い。内閣府が発表した2022年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は季節調整済みの年率換算で前期比0.6%増だった。

実質GDPはこの2年ほど、四半期ごとにプラスとマイナスの成長が交互に続いている。今回も2四半期ぶりのプラスだが、2%前後だった市場の予測は下回った。内需がマイナス、外需がそれを超すプラスにそれぞれ作用した。

内需の半分を占める個人消費は新型コロナウイルス禍からの経済活動の復調や政府の「全国旅行支援」で前期比0.5%増えた。設備投資は半導体製造装置などが低調で、3四半期ぶりマイナスの0.5%減と明暗が分かれた。

ただ内需が減った最大の要因は民間在庫の変動がGDPを0.5ポイント分押し下げたことだ。全体として内需は底堅さを保っている。

外需では輸出が1.4%増えた半面、輸入が0.4%減り、全体でGDPを押し上げた。昨年10月の入国規制の緩和に伴う外国人旅行者のインバウンド消費も輸出に合算され、プラスに寄与した。一方で原油高や円安の一服が、輸入の減少をもたらした。

貿易を通じた海外との所得の出入りがプラスに転じ、所得流出がひとまず止まったのは心強い。

だが、好材料と悪材料が入り交じる日本経済の不透明感は強い。

一つは海外経済の動向だ。インフレ退治で金融引き締めがなお続く米国や欧州では、一時の悲観論は後退したものの景気の低空飛行が続きそうだ。ゼロコロナ政策を脱した中国経済も心もとない。

内需面でも課題が山積する。生活に関連する物品の値上げが相次ぐなか、家計の所得の増加が追いついていない。個人の消費や企業の設備投資の動向も、賃上げと経済成長の好循環が起きるかどうかに大きく左右される。

人材獲得を狙った積極的な賃上げの動きも起きている。この流れが着実に広がり、日本経済の活性化につながる展開が望まれる。

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