[社説]高速道路は交通体系見据え不断に見直せ

政府は高速道路の有料期間を50年延長し、2115年までとする方針を示した。新たな料金収入を大規模な補修の財源に充てる。高度成長期に建設した高速道路の老朽化は加速しており、有料期間の延長はやむを得ない。
人口減少や働き方、移動手段の変化が進み、自動車の形も100年に一度の変革期を迎えている。将来の交通体系の変化を見据えながら、高速道路のあり方を不断に見直していくことが大切だ。
高速道路の料金制度を巡っては、05年の道路公団民営化で新規路線の建設を抑えるため、料金徴収を50年までとし、その後は無料開放するとしていた。ただ12年の笹子トンネル事故をきっかけにした点検で大規模な補修の必要が判明したため、14年に有料期間を65年まで延長して費用を捻出した。
高度成長期に東京五輪などに向けて造られた高速道路は、維持管理が後回しにされ、老朽化が著しい。足元で更新が必要なのは高速道路3社で500キロ、費用は1兆円。首都高速道路は22キロで3000億円に上る。こうした更新への対応は急務だ。
財源として料金徴収の期間を2115年まで延ばす。延長を繰り返すなら「永久有料」にすべきだとの声もあったが見送った。永久有料は無駄な道路建設の温床になる可能性があり、妥当な判断だ。
今回から更新が必要になるたびに、50年間で償還できることを確認したうえで随時、追加の計画を承認することにした。技術の進展で更新作業のあり方が変わる可能性があり、それに対応できる仕組みにしたのは望ましい。
問題はこの財源が2車線を4車線に拡張することにも充てられることだ。暫定2車線の区間は1400キロあり、このうち880キロを優先区間として4車線化を進めている。建設費は1キロあたり50億円ほどかかり、優先区間だけで4兆円以上になる計算だ。
政府は米韓仏独などの諸外国は4車線以上が当たり前だとして国土強靱(きょうじん)化予算なども投入して整備を進めている。災害時に有用な区間もあるが、すべてが必要か、精査が要る。
自治体からは地域間の交流を促すため、高速道路網の整備はまだ必要との声は根強い。だが人口減少や技術の動向、他の交通手段との兼ね合いで、どこまで整備するかは変わる。長期的な視点で高速道路のあり方を議論すべきだ。