[社説]メガバンクは反転攻勢の機生かせ

日本長期信用銀行などが破綻し銀行危機が深化する転換点となった1998年から四半世紀がたつ。100兆円に膨らんだ不良債権の処理は日本経済全体に深刻な打撃を及ぼし、生き残りをかけたメガバンクの結成につながった。
業績や財務は回復した。だが日本の金融を代表する3メガ銀への投資家の評価は今もさえない。成長ビジネスを周到に見極め、大胆な戦略転換にも踏み込んで、今年を反転攻勢の契機にしてほしい。
前年に山一証券や北海道拓殖銀行が経営破綻し、98年は危機封じ込めの成否が問われた。だが同年3月に初めて実現した公的資金の一斉注入額は1兆8千億円。見立てが甘く、不良債権の実態と比べて小出しの対応にとどまった。
年末にかけて長銀と日本債券信用銀行が連続破綻した衝撃は拓銀の比ではなく、むしろ危機の底が抜けた。取引先への貸し渋りや貸しはがしがひどくなった。
巨大化に活路を求めた大手銀の業容は確かに拡大したが、PBR(株価純資産倍率)は解散価値の1倍を大きく下回る。それが今の3メガへの投資家の評価だ。
各行の経営陣にも危機意識はある。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は先月、米国リテール銀行の売却を完了した。邦銀がまだ勝負できるアジア市場での買収や、株主還元に資金を回して企業価値を高める狙いだ。
戦略は横並びでなくてよい。三井住友FGは逆に米国市場の潜在成長を見込んで今年、デジタル銀行を立ち上げる。みずほFGは人事政策や企業風土改革を担う女性役員を社外から招いた。負の歴史の払拭に向けた決意の表れだ。
米欧の大手金融機関の業績悪化など国際金融情勢への警戒は欠かせない。一方、財務面でメガ銀の投融資余力は高まった。巨額資金が要る企業の脱炭素への取り組み支援も新たな商機となる。
株価低迷の底流にある国内の超低金利政策にも修正の動きがある。「選択と集中」を加速し、投資家の期待に応えるべきだ。