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[社説]少子化対策は社会の構造を変える覚悟で

岸田文雄首相が4日の記者会見で、2023年に「異次元の少子化対策」に挑戦すると表明した。関係省庁などによる会議を設け、3月までに児童手当の拡充など強化策のたたき台をつくる。

出生数が急減するなか、正面から取り組む意欲を示したことは評価したい。ただ、実効性を伴う施策とするには、家族を持つことを難しくしている社会の構造的な問題にまで踏み込む必要がある。

まずは若い世代の就労支援が重要だ。少子化の最大の要因は未婚化であり、背景には経済面の不安がある。例えば男性の年収や正規雇用かどうかによって、結婚している割合は大きく異なる。

いったん非正規雇用になるとなかなか抜け出せない硬直的な労働市場や、年功序列型の賃金体系を見直すべきだ。職業能力を伸ばす機会を増やし、成長業種への転職なども後押ししたい。

共働きが増えるなか、仕事と子育てが両立しにくい現状も変えねばならない。保育所の待機児童問題は都市部を中心に今もなくなっておらず、旧態依然とした長時間労働などの慣行も残る。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務など柔軟な働き方が広がりつつある。官民あげて推進すべきだ。先進国のなかで飛び抜けて女性に偏っている家事・育児分担を見直し、男性の育児を増やすことも欠かせない。

少子化対策は1990年代から何度も政府の重要課題となり、多くの計画や法律ができた。だが古い働き方や暮らし方の見直しは一向に進んでいない。この間、親となる若い世代の数はさらに減り、人口減の傾向が加速している。

政府の新たな検討作業では、児童手当などの経済支援のほか、育児休業制度の拡充なども大きな課題になる。児童手当ひとつとっても子どもの多い世帯にどこまで手厚くするかなど、論点は多い。海外の実例なども踏まえ、効果的な配分の仕方を検討してほしい。

そもそも財源がなければ、支援拡充は絵に描いた餅だ。高齢者に偏る社会保障を見直し、効率化したうえで、負担をどう分かち合うか。国民的な議論が不可欠だ。

国の調査では若い未婚女性の3人に1人が、自らが実際に歩みそうな人生を「結婚せずに就業」と答えた。多くの若者が家族を持つ将来像を描けていない。異次元というからには、首相は強い指導力と、相応の覚悟を示してほしい。

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