[社説]中国とサウジの接近は座視できない - 日本経済新聞
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[社説]中国とサウジの接近は座視できない

中国の習近平国家主席がサウジアラビアを訪問し、投資拡大やエネルギー協力など包括的な戦略協定に調印した。

サウジは米国との強固な関係が揺らいでいる。その隙を突いた中国の影響力拡大が、国際社会の分断を広げることになりかねないことに警戒が必要だ。

習氏はサウジのサルマン国王や実力者のムハンマド皇太子との会談で、中国の広域経済圏構想「一帯一路」と、脱石油依存を目指すサウジの経済構造改革「ビジョン2030」の連携を確認した。

中国は石油消費の約7割を輸入に頼る。持続的な経済成長を維持するにはエネルギー資源の安定確保が条件であり、サウジは重要な輸入相手国だ。

世界最大の原油輸出国であるサウジは、脱炭素の潮流下で安定した輸出先の確保と、産業育成への投資の呼び込みを求めている。

一方、サウジが緊密な関係を維持してきた米国はシェール革命により石油やガスの輸入を必要としないエネルギー自立を実現した。中東の位置付けは低下し、加えて人権問題を重視するバイデン政権はサウジに厳しい目を向ける。

習氏はアラブ諸国の首脳との会議で、石油貿易の決済に人民元を使うことを提唱した。世界の石油取引は米ドル決済が原則だ。中国は購買力をたてに、基軸通貨である米ドルにくさびを打ち込もうとしているとみてよい。

ウイグル問題などを念頭に置いた、人権問題を通じた内政干渉に共に対抗することや、台湾独立の反対も確認した。民主主義や人権などの価値観をめぐる日米欧との対立は、亀裂を一段と広げることになりかねない。

もっともサウジが米国との関係を完全に切るわけではないことに注意が要る。むしろ中国への接近には、米国へのけん制の手段として使いながら、米中のはざまで巧みに独自の立ち位置を探る狙いがあると考えたほうがいい。

日本は中国の動きを座視すべきではない。原油輸入の中東依存度は足元で上昇を続け、95%を超える月もある。この数字は1970年代の石油危機時より高く、中東との関係を強化しなければならない状況が強まっている。

中国の台頭により中東で日本の存在感が薄れるようではまずい。原油を中東から買うだけでなく、中東諸国が必要とする双方向の関係を日本は探る必要がある。

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