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[社説]企業は多様な情報を発信し競争力磨け

企業が2023年から幅広い経営情報の開示を求められる。売上高や利益、資産・負債といった財務に関する情報だけでなく、気候変動対策や人材育成など経営のサステナビリティー(持続可能性)に関する項目も有価証券報告書への記載が必要になる。

金融庁は幅広い情報開示が企業の競争力を高め、市場の活性化につながるとみて、関連規則を改正する。企業の間には負担増を懸念する声もあるが、長期保有の株主を増やすための投資家向け広報(IR)として取り組むべきだ。

上場企業など約4000社が対象で、3月期決算企業の報告書から適用される。具体的には、人材の育成方針や職場環境の整備など、人的資本の充実に向けた方針や施策、指標などを開示する。

さらに、女性活躍推進法などの求めに応じて「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」を公表している企業は、報告書への記載も求められる。これにより投資情報としての女性活躍の重要性が高まる。

気候変動が経営に大きな影響を与えると判断する企業は、どのような体制でリスクを把握し対処するか、といった観点の説明が必要となる。温暖化ガスについても、自社が直接排出したものだけでなく、他社から供給された電力使用に伴う間接排出量も公表することが推奨されている。

人材や環境を軽視する企業は社会的な批判を浴び、労働者や消費者から高い支持を得られない。長期にわたり競争力を保つことも難しくなる。人材・環境などを「サステナビリティー情報」と呼ぶのはそのためだ。

今後も途上国の人権保護や生物多様性の保全など、多様な情報の開示が求められる見通しだ。国際的な統一開示ルールをつくる議論も本格化している。議論の行方を注視するだけでなく、日本企業も積極的に基準づくりに対して意見を表明すべきだ。

もちろん、決められた数値情報を開示するだけでは、投資家の支持は得られない。経営者がIRに自ら責任を持ち、積極的にメッセージを発する必要がある。

オムロンのように環境・社会問題への取り組みに絞った説明会を開く企業も増えつつある。社会の変化をいかに予想し、柔軟に対応していくか。それを丁寧に説明することが、サステナビリティー情報開示の要諦である。

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