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[社説]親権の議論は子どもを第一に

離婚後の親権のあり方について、法制審議会の部会が中間試案をまとめた。共同親権の導入を含めさまざまな選択肢を示し、議論の「たたき台」とする。2023年2月中旬まで、国民の声を聞くパブリックコメントも始めた。

厚生労働省によると子どものいる離婚は21年、約10万5千件だった。多くの人にかかわる問題だ。子どもの最善の利益、幸せを第一に、どういう仕組みが望ましいのか、幅広い議論が必要だ。

現行の民法では、子どもの親権は婚姻中は父母双方が持ち、離婚後はどちらか一方になる。

試案では共同親権の導入といまの単独親権の維持とを併記した。共同親権についてはさらに、原則は共同か単独か、身の回りの世話をする「監護者」を定めるかどうか、など細かく分けた。

部会では21年3月から議論してきたが、意見の隔たりが大きく、方向性は示していない。

共同親権の利点としては、親としての自覚が高まり養育費の確保などにもつながる、離婚のさいの親権争いや子どもの連れ去りを防げる、といった指摘がある。

一方、反対する立場からは、ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待が離婚後も続く、といった声も強い。そもそも養育費の支払いは、親権にかかわらず親の責務だ。

海外の主要国では共同親権が一般的だが、具体的なやり方はさまざまだ。離婚のさいに裁判所の関与が必要なことも多い。

日本では夫婦の協議だけで離婚するケースがほとんどだ。「家庭のことは家庭で」という社会的な意識も強く、離婚の悩みに対するサポートや、DV、虐待問題への介入・支援も十分ではない。親権について今後の議論の土俵を整えるうえでは、こうした取り組みも欠かせない。

今回の試案では、養育費確保の実効性を高める方策や親子の交流のための対策も盛り込まれている。離婚後の子どもの立場に目を配り、これらの議論も進めたい。

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