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[社説]サイバー防衛の強化へ行動を速やかに

ロシアによるウクライナ侵攻や中国による台湾威嚇で、国家が絡むサイバー攻撃(情報・通信システムへの電子的な攻撃)の脅威が顕在化している。現代の紛争では電力や通信などのインフラや政府や軍の情報システムへのサイバー攻撃が不可避なことが分かった。

そこで心配になるのが、ひ弱といわれる日本のサイバー防衛体制だ。政府と国会は強化のため速やかに行動を起こすべきだ。

まず国全体のサイバー防衛を総合的に指揮、実行する司令塔が必要だ。内閣官房にある国家安全保障局と内閣サイバーセキュリティセンターは権限とサイバーの実務能力が弱く、連携も十分ではない。改善策を探ってほしい。

自衛隊はこの春、サイバー防衛隊を設けた。しかし、その任務は防衛省・自衛隊のシステムの防御に限られる。電力や通信などの重要インフラの防衛は各事業者と所管省庁に任されている。

背景には各省庁、組織が個別に自らのシステムを守るという、日本のサイバー防衛の基本原則がある。バラバラに守ったのでは「穴」が多くなる。攻撃元の探知や攻撃の妨害などの積極的な防御行為は、民間には無理だ。より統合的な防衛体制が必要だ。

政府は年末に向け国家安全保障戦略などの改定と防衛予算増額を検討する。そのなかでサイバーや電磁波、宇宙も重要な防衛領域と位置づけている。これを機に省庁縦割りの弊害を是正する組織改革を含め、総合的なサイバー防衛力強化策の検討を加速すべきだ。

法整備も大きな課題だ。有効なサイバー防衛には早期探知や攻撃元の特定、攻撃の未然防止のための相手方システムへの侵入など「積極的防御」が欠かせない。だがそれには法制上の障害があると専門家は口をそろえる。

たとえば現行の防衛大綱では敵のサイバー攻撃を「妨げる能力」の確立を宣言したが、憲法21条が保護する通信の秘密、不正アクセス禁止法、刑法上のサイバー犯罪規定などとの兼ね合いが整理できておらず実現していない。

サイバー攻撃の主体は軍と民間人の区別がつきにくい。平時と有事の境界線も曖昧だ。これらを勘案し、警察と自衛隊がどう役割分担すべきかも整理が必要だ。自衛隊や警察などのサイバー防御担当者の人数も主要国の中で圧倒的に少ない。各サイバー担当組織の規模拡充も喫緊の課題だ。

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