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[社説]産業の新陳代謝促す企業再生の仕組みを

政府は企業再生を円滑にする制度の整備に乗りだす。2023年の通常国会に「私的整理円滑化法案」を提出し、関係する債権者全員の同意が必要だった私的整理を多数決で進められるようにする方針だ。同様の制度は主要国では導入済み。遅ればせながらも、日本が続くのは産業の新陳代謝を促す効果が期待でき、歓迎したい。

経営が行き詰まった企業が債務の減免を経て再生をめざすルートは、裁判所の監督下で実施する会社更生などの法的整理と、銀行など主に金融債権者との協議で進める私的整理の2つがある。

前者は日本航空の再生などに適用され、手続きの厳密さや公平さが特徴だ。一方で「倒産会社のレッテルを貼られる」「手続きに時間がかかり、社員や取引先が逃げる」などマイナスも多く、再生の足を引っ張る恐れがある。

それに対して、当事者の話し合いで進める私的整理は迅速かつ実情に即した柔軟な合意が可能だ。当該企業の評判や信用が傷つきにくいというメリットもある。

ただ私的整理の実現には関係する債権者すべての同意が必要で、ハードルが高い。そこで債権者の多数決決議と裁判所の認可によって、債務整理を可能にするというのが新制度の骨子だ。

裁判所が関与する点で、新制度は私的整理と法的整理の混合型でもある。米英独仏などの主要国ではよく似た制度が整備され、頻繁に利用されているという。

日本企業はバブル崩壊後に債務の重荷で身動きが取れなくなり、時間を浪費した苦い経験がある。足元を見れば、コロナ禍で企業の抱える債務残高は大きく膨らんだ。過剰債務から抜けだし、経済を前に進めるためにも、スピード感のある企業再生手法の導入や普及は待ったなしの課題だ。

そもそも日本経済は新陳代謝が鈍く、長期の停滞を招いた。中小企業の場合は金融機関が融資の際に経営者に個人保証を求める前時代的な慣行が今も残る。これが壁となり、経営につまずいても法的整理や私的整理に踏み切れず、借金を返すためだけに存続する「ゾンビ企業」化する例も多い。

金融機関は経営者個人を債務に縛りつけるのではなく、事業計画の中身で融資の可否を判断する目利き力を磨くべきだ。産業の新陳代謝を加速し、新企業の登場や既存企業の再挑戦を促すことこそ、経済再生の必要条件である。

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