[社説]産油国と消費国は亀裂を回避し協調を

石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非加盟の有力産油国で構成するOPECプラスは、11月から日量200万バレルの減産を決めた。
世界景気の後退による石油消費の減少を警戒し、一段の値崩れを回避する。これに対し、急激な物価上昇に苦慮する米欧は、原油価格を上昇させかねない産油国の姿勢に不満を強めている。
産油国と消費国が対立し、亀裂を広げるのは好ましくない。両者が協調し、供給の安定と双方が納得する価格水準を探る努力を尽くさねばならない。
減産量は世界需要の2%に相当する。OPECプラスは2020年5月の大幅減産以降、段階的に生産量を増やしてきた。しかし、10月から減産に転じ、今回さらに大幅減産に踏み切る。
ロシアのウクライナ侵攻に伴い、米市場で1バレル130ドルを超えた原油価格は足元で一時、80ドルを割り込む水準に落ち込んだ。
原油の輸出収入に依存する産油国は、財政収支を均衡させるために80ドル程度の価格を必要とする国が多い。これを下回る低迷に危機感を強めたのだろう。ウクライナ侵攻の戦費を確保したいロシアも高値を必要としている。
今回の減産決定を受けて、米原油市場では3週間ぶりの価格に上昇した。原油価格が上がれば、高いインフレが続く米欧ではさらに物価上昇圧力が強まる。日本でも円安と原油高がガソリンなどの価格を押し上げる。
ロシアを含む産油国と日米欧の消費国の分断を懸念する。原油の増産余力はOPECの中核であるサウジアラビアなど一部の中東産油国に集中する。日米欧の消費国はこれらの国々へ増産を働きかけてきた経緯がある。
米国では11月に議会の中間選挙を控える。バイデン大統領は就任以来関係が冷え込んできたサウジを7月に訪れ、増産を要請した。にもかかわらず、サウジは今回、大幅減産を主導し、大統領は失望を表明した。両国関係が再び悪化すれば中東の安定に影響が及ぶ。
産油国にとって目先の高値で歳入が増えても、中長期では原油高と供給不安は消費国の石油離れを加速することになりかねない。消費国と連携し安価で安定した供給を維持することが、脱炭素への移行期において石油の役割に目を向けさせ、結果的に産油国の収入を最大化するはずだ。
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